「薬も過ぎれば毒となる」のことわざ通り、プラスと思われる事象が逆の結果を生むこともあるから、世の中は難しい。 ここでの「薬」は、暴力団という絶対的な社会悪に対する鉄槌(てっつい)だ。特定危険指定暴力団の工藤会(北九州市)がかかわったとされる一般市民襲撃4事件で、殺人などの罪に問われた同会総裁に死刑を言い渡した8月の福岡地裁判決。総裁の指示を裏付ける直接証拠がない中、実行役の組員らとの共謀を認定するという画期的な判断だった。 「あんた、生涯後悔するぞ」と法廷で裁判長に言い捨てた総裁の言葉がクローズアップされたが、懸念されるのは「報復」だけではない。判決がもたらす衝撃があらゆる暴力団組織に及び、水面下でのマフィア化が加速するのではないかという点だ。 どういうことか。暴力団や組員は警察当局に認定、捕捉されており、いわば〝監視下〟にある。今回の判決のように、組員による犯罪でトップが同等の責任を負う