(月刊「正論」6月号より) 三月十三日付の朝日新聞朝刊に、「象徴天皇制を問い直す」という記事が掲載された。『大正天皇』(朝日新聞出版)、『昭和天皇』(岩波新書)など皇室関連の著作が多い政治学者、原武史氏へのインタビューである。 これまで度々、皇位継承を含め皇室について意見を述べてきた原氏を「皇室の御意見番」と見る者もいるだろう。例えば『大正天皇』は、研究が未発達だった大正天皇に光を当てた仕事と言え、私も大いに参考にしたことを思い出す。 しかし、原氏の論調はいつもどこか冷めていた。本質は皇室を慮っているように見えて、皇室制度の相対化を試みるものなのだ。皇室に寄り添うような姿勢を示しつつも、宮中祭祀廃止論を主張してきた原氏であるが、今回ついにその主張の核心が「皇室の廃絶」であることが明らかになった。 皇室典範改正へ向けた議論が加速する今、上からの目線で皇室のあるべき姿を説き、皇室の存在自体に疑