元心臓外科医でオウム信者だった林郁夫(77)が地下鉄サリン事件を自白した理由は、取調官の刑事に惹(ひ)かれたからだ。著書『オウムと私』に内心の描写が詳しい。 警視庁の取調官は容疑者の林を「先生」と呼んだ。「何が先生なものか」。林は反発するが、心を閉ざせなくなっていく。威圧でなく、自白を強要するでもなく、人としての琴線に触れ心を開かせようとする調べに、林は「プロだ」と感心し、医師時代を思い出す。 《本気で理解しよう、真実を追求しようというプロの厳しさ、あまり物事にこだわらぬ性格、それでいてどこかに『照れ』をもっている、批判的な『白(しら)けの部分』を大切に思う男っぽいところに心惹かれました》(オウムと私)