私の研究分野は「環境倫理学」である。「環境倫理学」という名前からは、環境主義者の高邁な理想を聞かされるという印象を持たれるかもしれない。あるいは自然と人間に関する難解な論理を構築しているというイメージがあるかもしれない。確かに、環境倫理学には「人間中心主義は克服できるか」とか「自然にはいかなる価値があるのか」といった問いに対する込み入った議論がある。議論をきちんと追っていけば、現実の環境問題に関わる話だということが分かるのだが、ちょっと聞いただけでは、どこか浮世離れしているという印象を受けるかもしれない。 近年では、環境倫理学の議論も、より地に足の着いたものに変わりつつある。もちろん、それまでの議論が無意味だったというわけではない。総論的な議論も重要だし、今も行われている。ただそれに加えて、具体的な環境紛争の事例をふまえた議論が多く見られるようになったというのが、近年の環境倫理学の特徴であ
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