「台風の脅威を恵みに」―。台風を制御し、さらには台風の持つ膨大なエネルギーを利用して発電するという「タイフーンショット計画」が横浜国立大学台風科学技術研究センター(TRC)を中心に動き始めている。台風制御については、政府の大型支援事業「ムーンショット型研究開発事業」に採択され、2050年代の社会実装を目指す。観測技術や気象モデル、シミュレーションなどの進化が、人類の夢ともされた気象制御をついにかなえようとしている。(曽谷絵里子) 地球温暖化の進行でさらなる激甚化や増加が懸念される風水害。世界気象機関によると、全世界の気象災害は過去50年で約5倍に増え、1970―2019年の経済損失額は3兆6400億ドル、死者は実に200万人超と推定されている。 特に台風は日本にとって身近な存在だ。ただ、台風のメカニズムも長く不明で、制御効果の検証もできないため、台風制御研究が進められることはなかった。だが