「水中の狩人」-。そのかわいらしい容貌からはピンと来ないかもしれないが、ペンギンはそう呼ばれている。ワシやタカが空を飛び小動物を狩るように、ペンギンは水中を飛ぶように泳ぎ、魚を捕らえ、食す。 でも動物園では…。プールを泳ぐ姿は格好いいが、ヨチヨチ歩きに思わず顔がほころぶ。「それでも」と飼育担当の嘱託職員細越利善さん(54)。「くちばしは、十分に野性の狩人を思わせる」。フンボルトペンギンの上くちばしは先端が鋭く、くわえた魚を押さえ付ける。下くちばしは、まるでカミソリのようだという。 ペンギン同士でけんかして血だらけになることもある。個体識別のタグを取り付けるためペンギンを固定していると、かんでくるのが職員泣かせ。「ほとんどの職員が何度も経験する。なかなか治らなくて…」。血と涙の飼育物語だ。