かつて「大災禍」によって多くの人命が無残に失われた近未来。2度と「大災禍」が起きないように、そして残された人的リソースを保つために、国境の垣根はとりのぞかれ、細分化した共同体「生府」によって構成される高度福祉社会が実現した。 他人はもちろん自分の心身でさえ傷つけることが倫理的な悪となり、暴力的な物語から古典的な嗜好品まで、刺激的な文化は幾重にもゾーニングされる。人体に埋め込まれた監視機械は身体情報をサーバーへ送り、対応する入念な医療マニュアルと分子レベルの医療技術で病気の多くが駆逐。高度福祉社会では心身の健康がプライバシーよりも優先される。風景も体型も理想にあわせて均一化され、刺激や雑音は社会から排除された。 これは、そんな優しいディストピアに違和感をいだいた少女達の物語……だと思っていた。 読了したのは相当前で、手元に持っていないので読み返せず、当時のメモを基に感想を書いておく。 作品の