要点 「反転授業」とは、従来教室の中でおこなわれていた授業学習と、演習や課題など宿題として課される授業外学習とを入れ替えた教授学習の様式だと定義される。 反転授業はアクティブラーニング型授業の一つである。反転授業でおこなわれる対面教室でのアクティブラーニングは、もはや受動的学習を乗り越える程度のそれではなく、かなり積極的に、「能動的(アクティブ)」学習のポイントを特定したアクティブラーニングとなる。 反転授業には、習得型(主として基礎的な知識・技能の習得を目指しつつ、授業によっては演習問題や実社会・実生活等の活用問題にも取り組む)と探究型(主として課題を通しての問題解決学習やプロジェクト学習、ひいてはそれらの学習を通しての思考力・判断力・表現力等、資質・能力を育成することを目指す)とがある。 第1節 反転授業とは (1)定義 「反転授業(the flipped classroom / th
要点 解決法として5点提案した。 ①単元単位でアクティブラーニング型授業を構成する ②講義ノートを改編する ③板書を最小限にする ④網羅主義から脱却する ⑤反転授業をおこなう 多くの教員がアクティブラーニング型授業をおこなうにあたってつまずいている大きな問題の一つに、授業進度がある。 アクティブラーニングの重要性や意義を理解しても、アクティブラーニングをおこなっていては、教えなければならない範囲を期間内に終えることができないというのである。体系だった教科書で教える中学校や高等学校の、とくに数学や理科、 社会の教科でこの傾向が強く見られるようである。すべてを教えないと、出口の入試に対応できなという考え方も相まって、状況を難しくしている。大学でも、理系の専門(基礎)科目に同様の傾向が見られる。 他方で、期間内に授業内容を進め、すべてを終わらせることができたとして、その授業内容を果たして生徒学生
[印刷ページ] 溝上慎一の教育論 目次 > 講話 > 「あの子はおとなしい性格だから」は無責任!(Part 2)(2017年7月15日に掲載 2018年6月7日更新) 要点 話すことや発表することが学習の一部であることを生徒学生に伝える。これを授業づくりの基本としてとらえる。指導のタイミングの基本は、コースや学期の「始め」にあるが、「繋ぎ」の指導や介入も重要である。それでも話をしない生徒学生に対しても、授業内の場面、タイミングで当該の生徒学生に指導・助言をする。 話をするのが苦手な生徒学生には、クラスのなかよりも、個別に指導や支援をするほうがいいかもしれない。できれば、生徒学生から目標を挙げてくるのを辛抱強く待つ。授業で「今日はどうだった?」とときどき声をかけてあげることも大事である。 一教員が授業や個別指導で取り組むには限界がある。学校(大学、学部学科、高校、中学校)がさまざまなチャンネ
心理学では、性格は「パーソナリティ(personality)」と呼ばれて研究が進んでいる。 若林(2009)は、パーソナリティを「各個人が認知している自己の行動や情動に現れる比較的安定したパターンについての心的表象であり、…(中略)…主観的には主に他者との違いとして認識されるものであるが、常に個人の行動になんらかの形で影響を与え、発達過程を通じて維持される」(p.315)ものと定義している。遺伝的な影響を受けつつ、環境(人やモノなど)への関わり、相互作用を通して発達するものである。 中学生・高校生のパーソナリティの変化を検討した研究は少ないが、オランダ人を対象にしたもので、中学生、高校生に相当する年齢期を1年間追跡調査したKlimstraら(2009)の研究がある。彼らは、中学生では1時点目(T1)と2時点目(T2)の相関係数がr=.43であったが、高校生ではr=.72であったことを報告し
[印刷ページ] 溝上慎一の教育論 目次 > 講話 > 「あの子はおとなしい性格だから」は無責任!(Part 1)(2017年6月24日掲載、2018年6月7日に更新) 要約 おとなしい、議論もできないような性格では、生徒は学校から仕事・社会へのトランジションを十分に乗り越えられないだろう。いくらテストでの成績がよくても受験学力が高くても、学力の三要素に照らせば、この態度の弱さは学力の低さと同義である。 おとなしい子供の性格を一人格として認めてあげたいが、その子供が先々苦労することが目に見えているなかで、そうやすやすと「それでいいよ」とはとてもいえない。あたたかく関わりながらも、その子供の社会化を一歩でも二歩でも促さなければならない。教師の促しが、やがては子供自らわき上がる意欲に繋がるように指導・支援しなければならない。 この問題は、何のために教育をするのか、私たちはなぜ教師になったのか、
要約 学術的には、深い学び(deep learning)は、「知識を他の知識や考え、経験等との関係のなかに位置づけ構造化すること」と定義される。 学びにおいて(高次の)認知機能を駆使する過程、すなわち「学びの認知プロセス」こそが、資質・能力、とくに思考力や判断力を育てる原資となる。 授業実践においては、学生の深い・浅いアプローチを採る傾向や好みといったスタイルにかかわらず、一人でも多くの学生が、深いアプローチを採るような教授学習状況を作り出すことが重要である。 文科省施策「主体的・対話的で深い学び」における「深い学び」は、学術的な「深い学び」をしっかり踏襲して説明されていると考えられる。その上で、各教科の特質に応じた深い学びを、より具体的に「見方・考え方」として発展させている。 第1節 学術的な「深い学び」とは 「深い学び(deep learning)」は、学術的には、学習の理解の深さを問
要点 「学校から仕事・社会へのトランジション(transition from school to work / social life)」は、学校から仕事へのトランジションと成人期へのトランジションの2つをまとめたものである。 国際的な文脈をふまえた一般的な「学校から仕事へのトランジション(移行)」の定義は、「フルタイムの学校教育(full-time schooling)を修了して、安定的なフルタイムの職(stable full-time work)に就くこと」である。 日本において近年は、初期キャリアにおける離転職が少なくなく、非正規雇用の形態が多様化・複雑化している。もはや就職=安定的なフルタイムの職とはいえなくなっている現状を鑑みて、国際的に定義される学校から仕事へのトランジションを考えていく状況となっている。 学校教育の目的は、職業人養成だけではなく、新しい生活・人生・社会を力強く
要点 主体性(agency)とは、「行為者(主体)から対象(客体)へとすすんで働きかけるさま」と定義される。これをふまえて主体的な学習(agentic learningあるいはlearning agency)は、「行為者(主体)が課題(客体)にすすんで働きかけて取り組まれる学習のこと」と定義される。 主体的な学習は、「(I) 課題依存型(task-dependent)」「(II) 自己調整型(self-regulated)」「(III) 人生型(life-based)」の三層から成る主体的な学習スペクトラムとして理解される。 アクティブラーニングは、第I層「課題依存型」、第II層「自己調整型」の主体的な学習に対応するもので、第III層の「人生型」の主体的な学習まで求めるものではない。その意味では、アクティブラーニング=主体的な学習ではない。 新学習指導要領の「主体的な学び」は、第I~III
[印刷ページ] 溝上慎一の教育論 目次 > 理論・データ > (理論)初等中等教育における主体的・対話的で深い学び (2017年1月12日掲載 2021年11月29日更新) 要点 学習指導要領改訂に向けての答申(2016年12月21日)が出され、主体的・対話的で深い学び(「アクティブ・ラーニング」の視点)が提起された。 1年前の『論点整理』と比べると、アクティブ・ラーニングに「深い学び」の視点を加えたことが最大の変更点である。この追加によって、「活動あって学びなし」「活動主義」「はい回るアクティブ・ラーニング」は、アクティブラーニングではないと否定することが容易になるだろうと期待される。 アプローチや定義の違いはあれども、学術的なアクティブラーニングと、答申のアクティブ・ラーニングの視点(主体的・対話的で深い学び)の目指すものに本質的な差異はないと考えられる。 主体的・対話的で深い学びを
(講話)答申が出たいま現場に求められる作業は? -「現場の理論」を構築して個性ある教育実践を示すこと! v2 要点 政府の施策文書や、アクティブラーニングをはじめとする学術的な論というのは、ローカルな文脈をもつさまざま個別事象に共通する点を一般化して「概念化」し、他の事象や概念とある理屈をもって関連づけ、筋道立てて「理論化」したものである。 答申が出たいま、現場に求められる作業は、現場が理論を学び、それに基づいて教育実践を創り出し、理論と実践とを往還し、そうしてローカルな文脈をふまえた「現場の理論」を構築することである。「グラウンディッドセオリー(grounded theory)」の構築ともいえる。 いま、答申を受けての教育現場からの実践的応答が切に求められる。 第1節 次期学習指導要領改訂に向けての答申 昨年末(2016年12月21日)に『幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校
はじめに 授業におけるふり返りの意義 アクティブラーニング型授業をおこなう上で、毎回の授業の「ふり返り」をすることはとても大切です。桐蔭学園の教育では主体的な学習者の育成を重視していますが、「ふり返り」の実施はこの点で効果が高いと期待しています。「ふり返り」は「気づき」を生みます。学習内容の確認はもちろん、自分の学びについて省察することで、主体的に学ぶ力が向上すると考えているのです。 第1節 ふり返りの事例 桐蔭学園で、「ふり返り」がどのように実施されているか、いくつかの例を具体的に紹介します。(以下は学内広報誌『桐蔭AL通信』に掲載された教員コメントからの抜粋) ◆図1を参照: 授業の最後に、キーワードなどを「今回のポイント」欄に書き、これをもとにペアで1分ずつ授業のポイントを発表し合う。意図的にふり返る時間を確保すること、このくらいだったら書いてみようという気になるメモ用紙ほどの用紙で
要点 「文部科学大臣告示」という形式で出される行政文書としての学習指導要領(案)において、主体的・対話的で深い学びが説かれ、「アクティブ・ラーニング」が記載から外れたことはまことに残念である。しかし、答申では明確に示された「アクティブ・ラーニング」である。主体的・対話的で深い学びと説明されるときには、その背後に「アクティブ・ラーニング」の用語があると理解していいのではないか。 「主体的・対話的で深い学び」では、この改革でもっとも訴えなければならない講義一辺倒の授業を脱却する、あるいはチョーク&トーク一辺倒の授業を脱却するというメッセージ性が弱いという問題がある。アクティブラーニング論は、何より講義一辺倒の授業を脱却するところに最大の出発点があり、そのうえで「アクティブ」な学びを特定してきた学習論である。とくに高校、大学の関係者は、今一度アクティブラーニング論の基本に立ち返って、施策推進を充
講演録はこちら(PDF) 講演資料はこちら(PDF) 講演のなかに出てくる関連ページ: -[桐蔭学園の教育改革] 桐蔭学園のアクティブラーニング型授業の改革2015-YouTubeビデオの解説 -[講話] 高校生の半数の資質・能力は大学生になってもあまり変化しない-10年トランジション調査 -[講話] アクティブラーニングとアクティブ・ラーニングの違い、なぜカタカナ? -[理論・データ] 大学教育におけるアクティブラーニングとは -[理論・データ] (理論)初等中等教育における主体的・対話的で深い学び-アクティブ・ラーニングの視点 -[講話] 外化なしの学習は思考力育成を放棄しているに等しい-外化としてのアクティブラーニングの意義 お問い合わせ:溝上慎一 mizokami (at) toin.ac.jp http://smizok.net/ Copyright © Shinichi Mi
要点 アクティブラーニングは、「一方向的な知識伝達型講義を聴くという(受動的)学習を乗り越える意味での、あらゆる能動的な学習のこと。能動的な学習には、書く・話す・発表するなどの活動への関与と、そこで生じる認知プロセスの外化を伴う」と学術的に定義される。 アクティブラーニングは、講義一辺倒の授業を脱却すること、学習を社会化することに大きなポイントがある。 伝統的な講義型・講義中心型授業に対して位置づけられるアクティブラーニング型授業は、「講義+AL型」「AL中心型」に類型化される。教育改革のターゲットは、講義型あるいは講義中心型授業を「講義+AL型」授業へと転換させることである。 第1節 アクティブラーニングの定義 (1) 学術的な定義 アクティブラーニングは、米国の高等教育において1980年代に提起され、1990年代に入ってボンウェルとアイソン(Bonwell & Eison, 1991)
ようこそ!「溝上慎一の教育論」のウェブサイトへ サイトポリシーをご了解の上お読みください。 溝上慎一の教育論:目次 (更新情報)(YouTUbe動画を除く) (は過去1週間以内の更新ページにつけてあります) 2021年11月29日更新 [用語集] 2021年11月29日更新 [理論](アクティブラーニング等のトピックについて理論的に概説するページです) 2022年7月25日更新 [講話](アクティブラーニング等のトピックについてフリースタイルで論じる雑考ページです) 2024年6月26日更新 [YouTube動画チャンネル](学校教育や心理学に関するインタビューや講義を配信します) 2020年1月18日終了 [AL関連の実践](原則として溝上や森朋子氏が実際に見学したAL型授業を紹介しコメントをつけています) 2022年5月28日更新 [データ] 2020年6月6日更新 tulip
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