明治維新を遂げた日本では、政府が旧来の貨幣単位「両」(兩)を、欧米の通貨に合わせて円形にする際に、その名称も変更した。大隈重信がお金を意味する丸を指で描いて説いたことから「圓」が採用されたというのは、当時すでに香港で「圓」が用いられていたことから見ると、俗説であるのかもしれない(中国では、「開元通宝」などにルーツをもつ「元」の流れもあったとも言われている)。ちなみに「銭」は、アメリカのセントに発音も近いので、大隈はそのまま採用したのだともいう。むろん日本の人々も、このように漢字の表音的性質に着目して利用することもあり、中国とは別に行われることだってある。 これで、「圓」はそのままの字体では広く世には受け入れがたくなったのである。そこで、ちょうど存在した「円」という略字が貨幣単位を表記するためにも活用されはじめる。手書きでの頻用を受けて、保守性が強い活字ではあっても、戦前から見出し活字や小さ