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ブックマーク / koikekaisho.hatenadiary.org (35)

  • 片塩氏の「論文」は「幻想小説」だった! - 楷書活字

    『タイポグラフィ学会誌04』所収 片塩二朗「弘道軒清朝活字の製造法とその盛衰」の冒頭に、若き日の片塩氏が猪塚良太郎氏の仕事場を訪ね、清朝活字について教えられるという挿話がある。「25年前に廃業」とあるし、素直に読めば、1970年頃の思い出話と読める。論文の書き出しからエッセイというのも不思議だが、その下にある註では、猪塚良太郎氏について「詳細不詳」となっている。「数度にわたって訪問した」相手を「詳細不詳」というのもこれまた不思議なことだ。 この「エッセイ」で、片塩氏は何を言おうというのか。どうやら弘道軒の活字が、戦後も「役所」(外務省か宮内庁)で使われ、そのことは一般には知られていない、清朝活字にはそのような謎があるというらしい。 にわかに信じがたい話だが、この話の裏はとれるのか。まず、猪塚良太郎という人について調べてみた。 Googleで検索してみると、 大日スクリーンのサイトの「描き

    片塩氏の「論文」は「幻想小説」だった! - 楷書活字
  • 神崎正誼の崎の字 - 楷書活字

    片塩論文72ページで、〈「神崎正誼の死亡公告」〉というところと、74ページの〈「神崎」は「神崎」と〉(二カ所)というところだけ、「粼」U+FA11をわざわざ使っている。 弘道軒清朝で印刷された「崎」を明朝体で再現しているのだが、こんなことが必要でないことをむしろ書いておくべきだろう。 二つの書物、 官員名鑑 明治10年5−12月 神崎正誼編 東京:弘道軒,明10−11 著者標目 : 神崎,正誼(1837−1891) 著者標目よみ : カンザキ,マサヨシ(1837−1891) 西暦年 : 1878 と 官員録 明治10年6月−11年7月 日暮忠誠編 東京:拡隆舎,明10−11 著者標目 : 日暮,忠誠 著者標目よみ : ヒグレ,チュウセイ 西暦年 : 1878 との、同じ箇所を見比べれば分かる。 「長崎県」の「崎」の字に幾つも種類があると考えますか? 「書体差」とはこういうことである。

    神崎正誼の崎の字 - 楷書活字
  • 『活版術』(韓国政府印刷局) - 楷書活字

    隆熙3年(1909=明治42)に出版された『活版術』については、小宮山博史「明朝体、日への伝播と改刻」(『と活字の歴史事典』柏書房、2000年所収)で紹介されている。 印刷図書館で、現物を見てきた。隆熙3年とは日による韓国併合の前年であるが、この書物を作った人々=韓国での活版印刷のための技術指導に努力する日人技師たちの情熱が伝わってくる。 写真は高木徳太郎技師が、日での活字サイズ調査を行った際の比較表。 日印刷局、築地活版、製文堂、江川活版の二号から七号の活字を並べて、その実サイズがばらばらであることを確認している。さらにポイント検査器で、各活字のサイズを100分の1ポイント単位で計測している。 そして、その後のページでは、清朝についても記述がある。引用する。 清朝活字即チ楷書文字ハ殆ント三十年以前頃盛ンニ新聞及雑誌類ニ 使用セラレタルモ現今ハ案内状或ハ名刺等ニ用ヒラルルニ過キ

    『活版術』(韓国政府印刷局) - 楷書活字
  • 再び東京日日新聞の楷書活字 - 楷書活字

    昨年6月に書いた記事に補足したい。 東京日日新聞の文にサイズの異なる二つの楷書活字が用いられていることは先に書いた。 仮に一方を文大、他方を文小とすると、文大は弘道軒清朝、文小は築地活版の楷書活字である。 ところが、片塩論文では104ページで、これを「俗説」として切り捨てるような物言いをしている。 おそらく片塩氏は東京日日新聞の紙面を実際にご覧になったことがないのであろう。 一例として、明治21年5月9日付の紙面を見てみよう(小宮山博史氏提供のコピーによる)。 一面は三段組みで、二段目と三段目は清朝五号のベタ組み24字詰めである。一段目にはまず広告があり、二号の明朝と五号の清朝が混植されている。その左は官報で、文小が使われている。 ベタ組みで30字詰め、天は少し空いている。片塩論文によれば、清朝五号は実測値で4.63mmであるから、一段24字詰めの行長は、4.63×24=111

    再び東京日日新聞の楷書活字 - 楷書活字
  • 片塩二朗氏の「弘道軒清朝活字の製造法とその盛衰」について - 楷書活字

    『タイポグラフィ学会誌04』所収 片塩二朗「弘道軒清朝活字の製造法とその盛衰」は、 弘道軒清朝に興味を持つものには必読の論文である。 20日には、論文発表会も開かれるので、その前に予習をしておこう。 http://www.society-typography.jp/news/ 10章(A4判110ページ余)に及ぶ論文なので、概略をメモしておく。 論文の骨子は、2008年に再発見され、提供を受けた横浜築地活字に保存されていた弘道軒清朝活字の父型・母型・活字のセット(以下「資料」)の検証であり、同時に木昌造系の明朝活字に比べ、研究の少なかった弘道軒清朝の研究史を概括しつつ、新たな視点を提供するものといえる。 「資料」は、1976年にタイポグラフィ協会が岩田母型から譲り受け、現在では印刷博物館に所蔵されている父型・母型・活字のセットと同等のものであり、1946年に岩田百蔵が弘道軒の継承者から買

    片塩二朗氏の「弘道軒清朝活字の製造法とその盛衰」について - 楷書活字
  • 弘道軒清朝四号の変体仮名 - 楷書活字

    手持ちの資料ではこれだけ。 117字ではとてもすべてとは言えないが、ま、とりあえず。 144dpiに落としているので読めない字もあるかも。 権利はイワタさんにあるのでトレースは(無理だけど)しないように。

    弘道軒清朝四号の変体仮名 - 楷書活字
  • 輸と輪 - 楷書活字

    常用漢字表に「詮」と「喩」が入って、入屋根と人屋根の区別が厄介になった。 まさか教育現場で入屋根を書かせたりしないよね。いや、どうだろうか。 区別可能なのは明朝体だけなのだが。 上から、弘道軒清朝、游築見出し明朝、SW(小篆)

    輸と輪 - 楷書活字
  • 「真」と「眞」 - 楷書活字

    twitterで「現代人の病」だと書いてしまったので。 明治十年の『官員名鑑』と『官員録』から。 姓と名の用例が並んでいる場所があったので選んでみた。 弘道軒清朝では「真」、明朝体活字では「眞」で組まれている。 これが普通の感覚。 とはいえ、一筋縄では行かない。手元の楷書活字資料では 正楷書は「真」だけ、文部省活字は「眞」だけ、弘道軒四号は両方ある。 『明朝体活字字形一覧』では「眞」しかない。『当用漢字字体表』の出現までは明朝体活字では「真」は必要なかった。手書きでは圧倒的に「真」でも、活字になると「眞」となり、そこに差異を見出すことはなかったといえよう。 ならばなぜ弘道軒に「眞」があるのか、これは宿題。

    「真」と「眞」 - 楷書活字
  • しかられて3 - 楷書活字

    「叱」で思い出すのが府川充男氏が『組版原論』を出したときのこと。 様々なフォントで「叱」を見せ、「デザインの違いと考えたい」としていたのだが、その中にc字形(𠮟=U+20B9F)がなかったので、ツッコミを入れた。 当時はDTPフォントでc字形を出すことは不可能だった。 関連して、「匕」についても書いておこう。部首「匕」(さじのひ)の最初に「𠤎=U+2090E」がある。「化」の古文といわれる字だ。だいたいどうして「化」が「人」部じゃなくて「匕」部にいるんだ!とぼやくことしきり。いやいやそれはともかく、「匕」は平成明朝ができるまで、つまり写研の文字ではずっと「𠤎=U+2090E」だった。拡張新字体を嫌ってすべてをJIS78で組んだりすると、「あいくち」(匕首)が「ばけくび」になってしまうので要注意だった。 (化と匕) 篆書だと違いがはっきりするが、楷書では書き分けは難しい。 ちなみに「叱

    しかられて3 - 楷書活字
  • しかられて2 - 楷書活字

    JIS X 0208:1997の「附属書7 区点位置詳説」によると、28区24点「叱」には3つの字形がある。 aは78年版の1刷の形、bは同じく2刷から4刷および7刷以降の形、cは4刷の正誤表と5刷の形。83年版、90年版はすべてbの形である。 aは正楷書、bは弘道軒清朝、cは文部省活字の字形に同じ。 これらはJIS X 0208では包摂されている。しかしJIS X 0213:2004では表外漢字字体表への対応のため、cの字形を別字体として分離し、第3水準に追加した。 なぜなら2001年にUCSにExtensionBが追加され、その中にcの字体の文字が存在したためだ。 『明朝体活字字形一覧』で見ると、道光版康熙字典にある2つの字形から諸橋大漢和の(3248=aと3247=c)2つの字形の間にある23の資料の中で、両方の字形を備えているのは2つしかない。1914年の博文館四号と1916年の宝

    しかられて2 - 楷書活字
  • しかられて1 - 楷書活字

    「叱」または「𠮟」(U+20B9F)の楷書活字の字形は以下の通り。 左から弘道軒清朝、正楷書、文部省活字。 『明朝体活字字形一覧』では、 詳細は明日にでも。

    しかられて1 - 楷書活字
  • 小学校で習う漢字6 - 楷書活字

    「聞」の耳は突き出さない。これは両方とも。

    小学校で習う漢字6 - 楷書活字
  • 文部省活字の特徴 - 楷書活字

    ここまでで面白いものをいくつか。 「羽」「耳」は、部分字体でもこの形。「園」は学習指導要領のほうが変かも。 「戸」「青」は正字だが、「黄」はこの形。「廣」も同様だ。

    文部省活字の特徴 - 楷書活字
  • 小学校一年生に教える漢字2 - 楷書活字

    学年別配当漢字(教科書体)は文部省活字とはかなり違うということを対照表で見てみる。 字体の異なるものがあるのは当然として、字体は同じでもバランスや勢いなどに差があるものが多い。なお、文部省活字の一覧には数字が含まれていないので、一部空欄になっている。

    小学校一年生に教える漢字2 - 楷書活字
  • 小学校一年生に教える漢字1 - 楷書活字

    学習指導要領の学年別配当漢字と文部省活字の比較。その一。

    小学校一年生に教える漢字1 - 楷書活字
  • 見つからない - 楷書活字

    まさか文部省活字に不明字が出るとは思わなかった。

    見つからない - 楷書活字
  • 互換漢字 - 楷書活字

    ここまで、すべて統合漢字で整理してきて、仮令字形的にぴったりでも互換漢字は使わずにやってきたのだが、これだけは致し方なし。

    互換漢字 - 楷書活字
  • やっちまったなぁ - 楷書活字

    文部省活字「糸」部にこんな字が。 補助漢字にはあるが、0213にはない。 「縳」(7E33)ねぇ。なぜこの字をと思いつつ、探すと文部省活字には「縛」がない。 間違えたようだ。

    やっちまったなぁ - 楷書活字
    satoschi
    satoschi 2010/03/13
  • 新旧字体差とUCS「禄」の場合 - 楷書活字

    「しめすへん」は手書きでは「ネ」の形に書かれ、常用漢字表では「示」形の康熙字典体を別掲している。UCSでは両者は統合されており、JIS2000のとき、これを区別するために「UCS互換漢字」の所に放り込んだ(その後「互換漢字」は大幅に追加されることになってしまった)。 貫禄の「禄」の場合は、旁にも二つの形があり、「禄」(7984)と「祿」(797F)という「棲み分け」ができているのだが、 左から、弘道軒清朝、正楷書、正楷書新略字、文部省活字。 こういうばらつき方はちょっと困る。

    新旧字体差とUCS「禄」の場合 - 楷書活字
    satoschi
    satoschi 2010/03/13
  • 文部省活字のExt.B - 楷書活字

    切り出し作業は「文部省活字」に入った。江守賢治氏の『解説字体辞典』(三省堂)より。 戦前の文部省公認にしては不思議な漢字も入っている。 まだ半分も進んでいないが、Ext.Bに振り分けたものをいくつか。 まずこれは仕方ない。口偏に「七」が音符なので、この「𠮟」がBMPにないということがショックである。JISでは「叱」を「シツ」として同定していたが、国語審議会が「𠮟」にこだわり、さらに一足早くそれがExt.Bに追加されてしまっていたため、JISも新規のポイントを追加するはめになってしまった。携帯メールでは打てない常用漢字の誕生となるかも。 「𢝰」(U+22770)と、「𣡸」(U+23878)。 「惣」と、「」もしくは「欝」ならば問題ないのに。

    文部省活字のExt.B - 楷書活字