柏書房から出てゐる『真性活字中毒者読本』、この第1章に収められてゐる府川充男さんの講演録「日本語組版の歴史」に、山田美妙『嫁入り支度に教師三昧』のとあるページが引かれてをります。『嫁入り支度に教師三昧』は近代デジタルライブラリーに在りますから、そちらから掲げておきませう。 「日本語組版の歴史」が『嫁入り支度に教師三昧』にどういふ具合に触れてゐるかと言ひますと――、明治年間に活版本が社会に浸透していく過程で、欧文組版から句読法が導入されていく、その一例として、かういふ話になってゐます: じつは句読点の遣い分けは読書法とともに文体(特に語尾の調子)と密接な関係があるはずです。図二十九、これは雑誌『都の花』第十七号の誌面の一部ですが、「警吏の尋ぬる問に対し開耶の答ふる素性を聞くに、当初小石川水道町に榛原左門と呼ばるゝ武士あり、夫婦二人に忠助とて名も相応しき忠僕と二人三人の下婢のありて、富めりと云