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ブックマーク / www.nagamura.jp (80)

  • まとめ(2)-最終章 (明朝体・考)

    明朝体を中心とした考現学的な話題や問題提起をテーマとして,とりあえず100回ぐらいまでは続けようという「適当な」目標を立ててスタートしたこのブログも,ついに(!)100回を迎えた。当初の予定にしたがって,今回を以って一応の幕を閉じることにしたい。 もとより内容や構成に関してしっかりした計画を立てて臨んだわけではなく,常々疑問に思っていること,その時々に感じたこと,または時事的な話題を書いてきただけである。したがって全体を読み直してみても,何の統一も脈絡もなく,通して読んでいただくと,たぶん,かなり支離滅裂な感じを受けられるかもしれないし,かならずしも重要なことを優先的に記してきたとも言えない。 そういう意味では,まだまだ書きたいこともあるので,また別のブログを立ち上げて論じていきたい。とくに,「これだけは主張しておきたい」と思っていることが十分に論じ切れなかったという思いを強く持ってい

  • まとめ(1) 常用漢字追加案について (明朝体・考)

    「常用漢字表」の改定作業が進んでいる。文化審議会の漢字小委員会において,今月15日に188字の追加漢字と現行の5字を外す暫定案が了承されたことがニュースで伝えられている。 明朝体考現学(?)を標榜するこのブログとしては,若干でも触れないわけにいかないであろう。 追加案の188字は以下の文字である(配列等を含めてasahi.comから引用)。 藤誰俺岡頃奈阪韓弥那鹿斬虎狙脇熊尻旦闇籠呂亀頬膝鶴匂沙須椅股眉挨拶鎌凄謎稽曾喉拭貌塞蹴鍵膳袖潰駒剥鍋湧葛梨貼拉枕顎苛蓋裾腫爪嵐妖藍捉宛崖叱瓦拳乞呪汰勃昧唾艶痕諦瞳唄隙淫錦箸戚蒙妬蔑嗅蜜戴痩怨醒詣窟巾蜂骸弄嫉罵璧阜埼伎曖餌爽詮芯綻肘麓憧頓牙咽嘲臆挫溺侶丼瘍僅諜柵腎梗瑠羨酎畿畏瞭踪栃蔽茨慄傲虹捻臼喩萎腺桁玩冶羞惧舷貪采堆煎斑冥遜旺麺璃串填箋脊緻辣摯汎憚哨氾諧媛彙恣聘沃憬捗訃 一方,削除の対象文字は, 銑錘勺匁脹の5字である。 これが今月31

  • 明朝体デザインの今後(6) (明朝体・考)

    シカバネの形について,篆書→隷書→楷書→明朝体という変遷の中で,おのずから字形も変わっていくのに,たとえば隷書の筆法をそのまま明朝体に再現するような選択をしてはならないことを述べた。これに対して,々々さんからコメントをいただいたこともあり,少し補足しておきたい。 この種の明朝体字形は,実際にもかなり存在する。文字鏡フォントの「尸」を見ても,かなりの数が確認できる。第1図はその中のほんの一部の,「居」とこれを部分字形に持つ文字の例である。 これらは,ほとんど隷書や古い時代の楷書に引きずられた結果の字形であろうと考えたいところであるが,結論を出す前に諸橋『大漢和辞典』を見ておくことにする。ここでは「尸」が左上が開いている字形の俗字とされており,その根拠を『正字通』に求めている(第2図)。 このあたりに篆書字形を正字とする思想が垣間見られるように思われる。 篆書→隷書→楷書という変遷の過程で

  • 明朝体デザインの今後(5) (明朝体・考)

    前回は明朝体と楷書の構造差を意識することさえ難しいことを述べた。したがって他の書体になるとさらに混乱が助長される。 上図は,そこに示された隷書の「居」が明朝体としてどの字形に該当するかという問題であるが,正解は上の「居」,すなわち常用字体でよいのである。そもそも隷書は小篆から派生した書体であり,小篆は下図のような形であった。 前図の隷書の「居」は魏の王基残碑(二玄社『大書源』より引用)であるから当時の書風であり,そのころにはいまのシカバネの形は存在していなかったはずである(もちろん,構造がある時期を以って一気に変わるなどということはあり得ず,「いつのまにか」主流の字形が変化していくのであるから,まったくなかったとは断定できないのはもちろんである)。 したがって前図の隷書の「居」を明朝体で表現すれば常用漢字字形の「居」の形でよい。こういう判断をせずにバカ正直に同一字形にしようとするから「

  • 明朝体デザインの今後(4) (明朝体・考)

  • 明朝体デザインの今後(3) (明朝体・考)

    « 明朝体デザインの今後(2) | Main | 明朝体デザインの今後(4) » 2008年05月27日 …【明朝体デザインの「キモ」とは】 明朝体デザインの今後(3) 「今昔文字鏡」フォントは「いわゆる」高品質文書体としての明朝体を志向しなかった(はずである)。そのことで,かえってリファレンスとしての役目を担い始めていると言えるのではないか。 しかし,やはり正しい構造表現を実現しながら格的組版に使える明朝体が必要なのである。現在は非常に多くの明朝体フォントが利用できるのだが,それで十分ではないか,と思うのはそんなに多くの漢字をみていない人の感覚だろう。住基・戸籍統一文字で6万字以上,現時点でもっとも多くの字数を収録している漢字字典は約8万5千字,さらに今昔文字鏡では17万字もの漢字(ただし明朝体以外の書体の文字を含む)を擁する。世の中には常識では判断できないような字形の漢字がいくら

  • 明朝体デザインの今後(2) (明朝体・考)

    明朝体の様式踏襲と字形構造の正確な表現は両立するのであろうか。 それを考えるために,若干アンチテーゼのようであるが,まずGT明朝の字形を検証する。この書体の開発経緯と位置づけについては,とくに説明を要しないであろう。10年ほど前に,この書体開発にほんのわずかだが(間接的に)関わったので,個人的には思い出深いものがある。ただフォント・組版関係者からは不評だった。字形デザインに対する評価が主たるものであったが,結論的に言えば「明朝」という名称を用いたのは,よい選択ではなかったかもしれない。この書体のデザインは,重心が一定しなかったり,線質に未完成な部分が多いといった欠点もあるが,「明朝」という呼称を使わなければマイナス評価の声はもっと少なかったであろう。 この書体の文字の一部を右に掲げる。一般の明朝体と違うのは,「見掛け画数表現」を排除したことである。漢字字形を,その漢字が持つ属性を踏まえ

  • 正しい漢字の表現(5) (明朝体・考)

    最小線幅と最小線間の管理について考える。 壁に貼られたランドル氏環を見て行う視力検査は誰もが経験している。これは,5メートル離れたところから7.5ミリの環における1.5ミリの切り欠きを認識できれば視力1.0と定義される。 これをそのまま25センチ視力に変換すると,切り欠きの幅は簡単な計算で約0.07ミリになる。この数値は「視力1.0の人が二つのものを二つに分離して見える閾値」である。これは10ポイントサイズの明朝体の横線幅に近い。 文庫の文は8ポイント,新書は9ポ,そしてワープロのデフォルトサイズは10.5ポ,10.5ポというのは五号に相当し,伝統的に行政文書の文字サイズに採用されていた。 このような実態からみれば,明朝体の横線幅という数値は重要な意味を持つ。この数値以下では見えない(線がトンデしまう)し,二つの線の間隔がこの数値より狭いと分離して見えないということである(これは

  • 明朝体デザインの今後(1) (明朝体・考)

    書体にはそれぞれの様式がある。それによって書体としての特徴が浮き彫りにされる。様式から逸脱したデザインは,アイキャッチャーとしては存在し得ても,正統的書体としては落第と言われかねない。 しかし,それにもかかわらず書体の分類は一意には定まらないことが多い。それだけ末広がりになっているとも言える。ただ,そうした中でも明朝体だけは別格だ。なぜなら明朝体は日における規範書体だからである。ここで言う規範,すなわち則るべき規則とは,この文字はこの字形を正しいこととする,という宣言でもある。したがってあまりに自由闊達な表現がなされると規範書体とは言えなくなるのである。 明朝体のよいところは可読性に優れているということだが,しかしこれも絶対とは言えなくなった。紙に印刷する以外の用い方が多くなったからである。現今ディスプレイの表示用としては明朝体はかならずしも適していない。また,横組適正も優れていると

  • 正しい漢字の表現(4) (明朝体・考)

    さいきん,井上雅靖著『牙青聯話』(書籍工房早山刊)を読んだ。この中に「沛 水部四画」という章があるのだが,漢字字形を生業とする身には気になるところである。 「沛」はサンズイに市(一+巾の4画)だが,この旁は市場の「市」(シ)とは義も違う。しかしいかにも紛らわしい。私も2月の講演で,たまたまこの文字を取り上げたばかりである。 井上氏は「沛」の意味からはじめて,この「紛らわしい」問題に入っていく。氏は4画の市(ハイ)と5画の市(シ)について,この《市》の字と前述の「市」の字は、その成り立ち、意味もまったく異なる別の字である。しかし、現在手にすることのできる一般的な辞書では、この二字は区別されていない。実に不思議なことと言わざるをえない。 と書いている。一般的な辞書が国語辞典なのか漢和辞典なのかはわからないが,漢和辞典であれば,義も画数も違うのであるから同一視するということはありえない。あ

  • 正しい漢字の表現(3) (明朝体・考)

    前回,明朝体デザインの構造を概観する図を示した。そこでまず重要な要件が「正確な構造表現」であることを述べたが,これらについて,もう少し掘り下げて考えていきたい。 図の右側に「環境条件」という機能項目を記した。今回は正確な構造表現とは何かを環境条件からみていくことにする。 環境条件とは何か。たくさんあるのだが,今回はフォントデザインと使用文字サイズについて検討する。現在のフォント環境は,理論的にはどんな文字サイズでも実現できる。しかし極小から極大まで利用可能な文字のデザインなど存在しない。かならず最適範囲というものがあるはずである。それにも関わらず,不思議なことに使用推奨サイズを明記したフォントは,ほとんどないのである。使用者の責任で判断せよ,と言いたいのかもしれないが,「こういうコンセプトでデザインし,どのぐらいの文字サイズに適している」といった程度のことはデザイナとしての最低限の開示

  • http://www.nagamura.jp/moji/minchou/2008/03/post_86.html

  • 正しい漢字の表現(1) (明朝体・考)

    « その8:まとめ | Main | 正しい漢字の表現(2) » 2008年03月18日 …【明朝体デザインの「キモ」とは】 正しい漢字の表現(1) 「表外漢字字体表」の解析から,漢字のデザイン差とは何か,というレベルのことでさえ大きな誤解が巷に横行していることがはっきりした。字形の面から漢字の「あるべき姿」を追求する姿勢は意外に疎かにされており,その結果,無駄な漢字が「創造」される一方で,漢字来の字形構造をまともに表現できていない文字もまた多いのが現実だ。 文字のキレイさだけを追求する風潮が,真に必要な漢字デザイン問題を曖昧なものにしている実態も無視できない。そういう意味で,文字における真のユニバーサルデザインとは何かを問うてみることは無駄ではない。 今月2日の朝日新聞日曜版“be on Sunday”の『日曜ナント カ学』はユニバーサルデザインフォントの開発状況を中心としたフォン

  • その8:まとめ (明朝体・考)

    以上,『表外漢字字体表』例字字形に関して考察した。これをまとめれば,例字文字は平成明朝体を採用した。『表外漢字字体表』建前としては,『常用漢字表』を引き継ぎ,デザイン差について,きわめて広範囲に定義しているように見える。しかしその一方,デザインレベルで標準の平成明朝体の字形を変更した。この字体表は「印刷標準字体」としての性格を持ち,したがって字形の細部まで関心が集まるにも関わらず,その理由については,同字体表上でまったく触れられていない。さらに,この変更された差異が「印刷標準字体」としての拘束条件になるかのような誤解を助長する可能性がある。すでに,この字形に引きずられた字形デザインを行った漢和辞典が出現している。といったところであろう。しかし,この変更によってデザイン統一がなされ,模範的な例字字形を提供したのであれば納得もできる。だが実態はそうでもないのである。 『表外漢字字体表』には「

  • その7:部分字形「瓦」について (明朝体・考)

  • その6:癶の字形について (明朝体・考)

    « PAGE展ジョイントイベントで講演 | Main | その7:部分字形「瓦」について » 2008年02月12日 …【表外漢字字体表の「字形問題」】 その6:癶の字形について 表外漢字字体表字形は,部分字形「癶」の最終画右ハライを1画目転折部と離して起筆するものとした。 図は標準の平成明朝(左)と表外漢字字体表(右)の「橙」を並べたものであるが,標準の平成明朝体では最終画右ハライが1画目転折部から起筆されていることがわかる。しかし,このケースでは前回までに述べたこととは若干趣を異にする。標準の平成明朝体字形を詳らかに見てみると,部分字形「癶」のほとんどの最終画右ハライは独立して起筆され,1画目とは非接触なのである。いわば「橙」の字形が異端児ということになる。平成明朝体標準セット(JIS X 0208)の中で,部分字形「癶」を持つ他の文字のいくつかを次図に並べてみた。これらのすべてが「離

  • その5:黽の字形について (明朝体・考)

    「黽」の中央右側の縦画を下まで伸ばしていることが分る。どちらが正しいのか。伸ばす意味は何なのか。このケースでも理由は明確とは言えない。 「黽」は蛙を意味する象形文字と言われる。この文字の説文小篆では二つの縦線は接触しているが,これが部分字形になっている文字の中には説文小篆でも離れているものもあり,また楷書の筆法においては右を「日」のように書くものも多く見られ,接触の可否などはまったく問題視されるべき箇所ではない。 なお,筆者個人としては下まで伸ばす字形がよいと思っていることを付け加えておく。 posted by gen : 2008年02月04日 22:51 Trackbacks http://www.nagamura.jp/moji/minchou/mt-tb.cgi/86 Comments Add a new comment

  • その4:部分字形「辰」について (明朝体・考)

  • その3:部分字形「盾」について (明朝体・考)

  • その2:「久」の字形 (明朝体・考)

    « その1:筆押さえの有無について | Main | その3:部分字形「盾」について » 2008年01月17日 …【表外漢字字体表の「字形問題」】 その2:「久」の字形 次は部分字形「久」である。 表外漢字字体表では,平成明朝体来の字形をいくつか変えているが,部分字形「久」もその一つである。次図は,上が来の平成明朝,下が修正の上で表外漢字表例字字形として採用された文字字形である。部分字形「久」の3画目起筆位置が下がっていることがわかる。 この差は字体差ではなく,単なるデザイン差である。それにも関わらず「あえて」手を入れて変更したわけだが,その理由は何であろうか。常用漢字表の「久」は3画目起筆位置が下がっているが,これが理由とは考えにくい。 実は表外漢字には「久」を部分字形に持つ文字にはもう一字あるのだが,これは来の平成明朝も3画目起筆位置が下がっているので変更していない。このこ