93年12月、20万人が参加した同人誌即売会「コミックマーケット」。回を重ね、昨年暮れは55万人に=東京・晴海 ■送り手と受け手の円環 おたく関連本の紹介というオーダーをうけて、まず脳裏に浮かんだのは「汗牛充棟」という故事熟語だった。中森明夫が「おたく」という言葉を提示してから今年で30年。オタク・otaku・秋葉系・萌(も)え系などさまざまな呼称のバリエーションを派生させつつ、実に多くのおたく論が展開されてきた。 元来、おたく論の書き手たちは、言論ないし学術系おたくであり、編集者たちも右に同じであろう。そもそも小難しい本を読むという行為そのものが、多分におたく的なのだ。つまり、おたく体質をシェアする送り手と受け手という円環の中で、おたく本という独特な出版市場が生成・拡大してきたのである。 論客としては、岡田斗司夫と大塚英志が二大巨頭。浅羽通明や東浩紀、社会学では大澤真幸や天野義智、精神分