強い日の光にさらされて、汗が流れる間もなく蒸発していくようだった。5月下旬、パキスタン東部オカラの気温は50度近くまで上がっていた。7月末の下院総選挙に立候補した人権活動家のナヤブ・アリさん(25)は、地区の有権者を一軒一軒回り、こう力を込めた。「苦しむ隣人の声を聞いてください。あなたの助けが必要です」 アリさんは心と体の性が一致しない「トランスジェンダー」だ。体は男性として生まれたが、物心ついたころから、ドレスや化粧品に憧れた。隠れて化粧したことが見つかると、物置に閉じ込められた。父親にはたびたび殴られ、13歳で勘当された。 つらい記憶を背負ったアリさんが、故郷に戻って立候補したのは、選挙直前の5月にトランスジェンダー保護法ができたからだった。それまで選挙に出るには、立候補届け出の書類などで男女どちらかの性を選ばなければならなかったが、保護法では男女とは別の性として立候補できると明記され
![性に悩んだ過去は社会変える力 LGBT、カメラの前へ:朝日新聞デジタル](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/2daaf38d33745bec6d16a21b42f0136c0b140b61/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fwww.asahicom.jp%2Farticles%2Fimages%2Fc_AS20181210004518_comm.jpg)