よく知られているように、日本「固有」の民族宗教であるとされる神道が組織されはじめたのは、6世紀に仏教が伝来してからのことである。中世においては、神仏習合思想や本地垂迹理論によって仏教との過剰な融合に向かい、近世においては、仏教的要素の極端な排除に向かった。もともと統一的な体系や自律性を持たず、バラバラに存在していたに過ぎなかった土俗信仰は、外からやってきた仏教に対する強い憧れと劣等感を背景として再編されていった。つまり神道は、日本固有の民族宗教であると言うより、「固有のもの」への信仰であると言ったほうが正しい。 「固有のもの」への信仰は、宗教だけでなく、あらゆるところに現れる。美術史家の高階秀爾は、フランスで西洋美術史を学んだ後、帰国した際に見た高橋由一の《花魁》に「西欧の油絵という技法の奥にある感受性とは明らかに異質の感受性」を見出し、「ほとんど驚愕に近い新鮮な衝撃」を覚えた、と語ってい
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