空洞化と言うと、たいていの人は、すぐに生産拠点の海外移転を思い描くようだ。だが生産拠点に関して言えば、日本の大手企業の生産拠点はすでにグローバル化しており、例え円高になったとしても巷で騒がれているほど問題にはならないのではないか。逆に、一度海外に出た生産拠点が、日本に戻るようなことがあったとしても、生産現場で働きたいという日本人は多くはない。事務職だった人が、製造ラインに職を求める可能性は低い。人件費や生産コストの問題もあるのだが、生産拠点で働く労働者を確保できなければ、確保できるところに拠点を移すしかない。今の時代、先進国でこの手の労働者を確保するのは簡単なことではない。 問題なのは、空洞化が生産現場でのみ起こっているわけではないということだ。筆者は製薬企業の創薬研究を受託する中国企業に勤めているが、この企業では主に創薬に関わる「知財」を生み出す仕事をしている。提供するのは研究開発という