将棋世界1992年8月号、先崎学五段(当時)の「先チャンにおまかせ:浪速、正棋会、乱れ撃ち。(後編)」より。 1年くらい前、羽生が、持ち時間が短い将棋が終わった後に、奨励会の頃を思い出した、といったことがある。中盤戦から双方1分将棋の大熱戦を、やっと勝ったので、そういえば、こんなに秒読みをやったのは、(TV棋戦を除くと)奨励会以来だ、というのだ。奨励会は1時間30分の持ち時間なので、深くて正確な読みよりも、短くとも、鋭い読みが大切になる。中盤戦から秒読みになることが多いので、実力が拮抗していると、だいたい難解な終盤を1分将棋で指さなくてはいけない。そのときに、最も重要なことは、手が見える、ということである。言い換えれば、将棋に対する反射神経にすぐれているということだ。 切れ負け将棋は、反射神経を鍛えるには絶好で、奨励会、とくに有段者になってからは、本当にたくさん指した。僕の有段者の時代、羽