ダルビッシュが尊敬し、エースとして将来を嘱望された男。しかしプロ入り後、ストライクが入らず「投手失格」の烙印を押される。苦悩の末「打者転向」を決断した雄平の波乱万丈の人生を追う。 プロでは通用しない投手 いま、日本プロ野球界でいちばん「面白い」選手は誰か。それはおそらくこの男だろう。 高井雄平、30歳。登録名は雄平、ヤクルトの「小さな4番打者」である。 先日行われたオールスターゲームで、雄平は両リーグでただ一人、2試合ともフル出場。甲子園の第2戦で楽天・福山博之から痛烈なライト前ヒットを放ち、ヤクルトファン以外にも「顔」を売った。 セ・リーグのベンチでは雄平のヒットに、阿部慎之助や鳥谷敬ら「WBC組」からもこんな言葉が漏れた。 「アイツはホント、思い切り振るよな」 「見ていて気持ちいい」 5月28日の交流戦、対日ハム戦で大谷翔平から放った一発も鮮烈だった。1点リードの4回、大谷の投げた初球