国会論戦では野党に感情的にやじを飛ばし、批判する国民を「こんな人たち」と突き放す。安倍晋三前首相が第2次政権を担った7年8カ月、政治の場で熟成した議論を聞くことがずいぶん減ったように感じる。著名人の言葉や日常のささいな違和感から社会の問題を切り取ってきたフリーライターの武田砂鉄さんは、安倍氏について「疑惑をやり過ごし、ウソをつき続けることで説明責任から逃れてきた」と評する。「言葉」を軸に、安倍政権と今の政治状況を論じてもらった。【野村房代/統合デジタル取材センター】 排他性を隠すために「オリジナルの言葉」を封印 ――この7年8カ月で、印象に残っている安倍氏の言葉は何でしょうか。 ◆まず後半の数年において、安倍さんが「オリジナルの言葉」を発する場面はほぼなかったと思います。真っ先に頭に浮かぶのは、記者のぶら下がり取材にまともに答えず、足早にその場を立ち去ろうとする後ろ姿。公式会見ではあらかじ