そごう・西武の労働組合のデモ行進に参加する棗一郎さん=東京都豊島区で2023年8月31日午前11時39分、藤井達也撮影 夕暮れになると焼き鳥の匂いが漂うJR有楽町駅近くの飲食店街に「梁山泊」はある。それは雑居ビルに入居している、労働問題に強いと評判の旬報(じゅんぽう)法律事務所(東京都千代田区)。銀座方面に足を向ければ、大企業の顧問などを務める大手の法律事務所が豪華なビルに居を構える。その対極的な場所にある旬報は、労働運動関係者から敬意を込めて、豪傑らが集まる「梁山泊」と呼ばれているのだ。 そこに集う弁護士の中でも、ひときわ異彩を放つのが棗(なつめ)一郎弁護士(61)。「労働問題の弁護だけで飯食ってます」。約20年前に初めて会った私(記者)に、そう言って笑った。 事務所の所属弁護士は29人。他の弁護士は労働問題と共に医療事故や刑事事件、相続、離婚などの得意分野を記している。しかし、棗さんは