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ブックマーク / finalvent.cocolog-nifty.com (89)

  • トランプ関税の90日間停止: 極東ブログ

    2025年4月10日、トランプ大統領が発動したばかりの「相互関税」をわずか24時間で一部停止するという発表が世界を駆け巡った。停止期間は90日間とされ、日やEUが対象に含まれた。この急転直下の動きは、トランプの貿易政策がもたらす不確実性と、同盟国との関係の複雑さを改めて浮き彫りにしている。 事の発端は4月9日、トランプが米国への輸入品に対して一律10%の関税を課す「相互関税」を発動したことだ。特に自動車関連には25%という高い税率が設定され、対象国には日、EU、カナダなどの同盟国も含まれていた。具体的な税率として、イギリスには10%、EU全体には20%、日には24%が課されたとされる。この差別的な税率設定は、特に日に対する厳しい姿勢を示しており、トランプが日を「経済的な脅威」と見なしつつ、「押さえつけられる相手」と軽視している可能性を浮き彫りにした。 発動直後の市場の反応は激しか

  • ポーランドと欧州におけるウクライナへの疲弊感: 極東ブログ

    今年に入り、第二期トランプ米政権成立が全体の空気を変えたから、というわけでもないだろうが、ポーランドや欧州でウクライナへの疲弊感から敵意までもが広がりつつあり、さすがに西側での報道からも漏れ聞くようになった。ウクライナの隣国ポーランドは、2022年2月24日、ロシアウクライナに全面侵攻を開始したときは即座に国境を開放し、数百万人の難民を受け入れたものだった。この対応は、歴史的なロシアへの警戒心と、かつて西部を自国領とまでしていた近隣国としての連帯感に支えられていたものだっただろう。ワルシャワやクラクフでは市民がウクライナ国旗を掲げ、料や衣類を手に支援に駆けつけてもいた。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、2024年7月時点で欧州全体に約600万人のウクライナ難民が登録されているが、ポーランドにはそのうち95.7万人もが滞在している。しかし、2025年4月を迎えた現在、初期の

  • レアアースの地政学: 極東ブログ

    ロシアの政府系新聞「ロシア・ガゼータ」は2025年4月7日、同国のレアアース(希土類元素)戦略の核心が北極圏にあると報じていた(参照)。同記事によれば、ロシアのレアアース確認埋蔵量の76%が北極圏に集中し、採掘の100%がこの極寒の地域で行われているとのことだ。具体的には、ムルマンスク州のロヴォゼロ鉱床ではニオブとタンタルが、コヴドール鉱床ではジルコニウムが生産されている。これらの元素は、ハイテク機器や軍事装備に欠かせない素材であり、ロシアが資源大国としての地位を強化する基盤である。さらに注目すべきは、リチウム鉱床の開発計画だ。コルモゼルスコエ鉱床とポルモストゥンドロフスコエ鉱床は、2025年に試験採掘が始まり、2030年までに年間4.5万トンの炭酸リチウム生産を目指す。これは電気自動車(EV)や蓄電池の需要増に対応するもので、ロシアがエネルギー転換の時代に備える姿勢を示す。 この北極圏戦

  • ウクライナ戦争における米国の関与について: 極東ブログ

    ウクライナ戦争における米国の関与について、米国時間3月29日のニューヨーク・タイムズにジャーナリストのアダム・エントゥスが『パートナーシップ:ウクライナ戦争の秘密の歴史 (The Partnership: The Secret History of the War in Ukraine)』(参照)と題する、ほぼ一冊のに匹敵するほどの詳細な記事を公開し、この問題に関心を寄せる人々で大きな話題となった。記事は、ウクライナアメリカ、イギリス、ドイツ、ポーランド、ベルギー、ラトビア、リトアニア、エストニア、トルコの政府、軍事、情報機関の関係者と1年以上にわたり、エントゥス氏が300回以上のインタビューを実施してそれをもとに書かれたものである。いずれ日語で正式な全文が書籍などで出版されることになるだろうが、すでに国際水準でウクライナ戦争を考察する人々にとっては常識になっているので、ここでも今後

  • 米国教育省の解体: 極東ブログ

    2025年3月20日、ドナルド・トランプ米大統領はホワイトハウスで、子供たちに囲まれた象徴的な場面で、米国教育省(U.S. Department of Education)の解体を命じる大統領令に署名した。この瞬間は、トランプの選挙公約であると同時に、共和党保守派が40年以上にわたり夢見てきた「小さな政府」の実現を象徴する出来事だった。トランプは「我々はできるだけ早く閉鎖する」と宣言し、教育省を「驚くべき失敗」と断じ、その予算と権限を州に戻すと約束した。署名から翌日には、約4,400人の職員のうち2,100人が休職に追い込まれ、実質的な機能縮小が始まった。 この動きは、単なる行政改革ではない。教育省が管理する学生ローンや低所得者向け支援(タイトルI、ペル・グラント)の将来に不安を投げかけ、すでに訴訟が提起されるなど、激しい政治的対立を引き起こしている。しかし、完全な閉鎖には議会の承認が必要

  • VOAは消えてしまうのか?: 極東ブログ

    アメリカの声(Voice of America、以下VOA)」が危機に瀕している。2025年3月、トランプ大統領の命令により、VOAの全スタッフ約1,300人が職場から締め出され、放送停止の瀬戸際に立たされているのだ。VOA側の公式アナウンスはまだなものの、ディレクターのマイケル・アブラモウィッツはフェースブックの個人声明で嘆いている。「私は深く悲しんでいる。83年ぶりに、歴史あるVOAが沈黙させられた」と。日でも英語学習や国際ニュースの窓口として親しまれてきたVOAが、今、存亡の危機にある。私は言語学に関心を寄せるものとして、VOA英語の簡易性とその教育的価値に深い愛着を持っている。VOAは、国際政治的に見れば、報道機関というよりプロパガンダ機関と呼べるかもしれないが、その価値は英語教育、米国的価値の普及、娯楽性、そして言語学的視点からも際立つものだ。 アブラモウィッツの悲嘆 事態は

  • トランプ・石破初会談: 極東ブログ

    時間今朝未明に行われたトランプ・石破初会談は、表面的には円滑に進み、日米関係の強化が演出された。懸念された大失態もなかったという点では成功裏に終わったのだが、それは同時に、事前に裏方が上手にトランプ米大統領をpleaseしておいたということで、常識的に考えても、裏で満足したトランプ大統領の条件が大きな課題であることは明らかであろう。 表面的な成功の要因 表面的な成功に見える要因について、簡単にまとめておこう。まず、貿易摩擦や防衛費増額の圧力が表立っていないからである。トランプ大統領は会談で「日は米国の最良のパートナーの一つ」と評価し、貿易摩擦や防衛費負担の増額要求をこの場では直接的には突きつけなかった。これにより、日側は「米国との関係を安定させた」と見せることができ、日米関係が順調であるとの印象を国内外に与えたが、その部分ではトランプ大統領の交渉を要すことはなかったということである

  • 4000本目の記事: 極東ブログ

    自分を紹介するとき、「ブロガー」と書くことがあった。「アルファブロガー」というのもあった。まあ、それなりに、そう言ってもいいかもしれないとは思ったが、嘘くささは感じていた。いったい何のブログ記事を書いたら、一人前のブロガーと名乗れるのだろうかね。そんなことを考えながらブログの投稿画面を開いていたら、ふと気がついた。この記事が4000目になる。単純計算で、1日1書いたとして11年くらいになるはずだが、私の場合は20年以上の歳月をかけての到達だ。たいしたことないじゃないか。そうか? まあ、その間、4人の子どもたちは成長し、全員が成人して親離れもした。時の流れとはなんと不思議なものだな。 よく「継続は力なり」と言うが、というか、これは赤尾好夫の言葉なんだけど、この4000に特別な継続という実感はない。そもそも人に何かを伝えることの困難さは、ブログを始める前から知っていた。それでも書き続け

    dazed
    dazed 2025/01/29
  • 古臭い未来と『未来の衝撃』: 極東ブログ

    かつて私には「未来」と呼んでいた時代があった。1960年とか1970年ころだ。イメージとしては『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』だろう。まあ、あれは未来でもないか。雰囲気があんな感じというか。なんというか、「未来」が今から見るととてもレトロなのだ。スーパージェッターの「流星号」みたいな感じだ。 そんな、1970年。一人の作家が私たちに未来について警告を発した。「未来はやがて狙いかかってくる。それは早すぎるので、私たちは適当に生きることができなくなるだろう。」それが、アルビン・トフラーの著書『未来の衝撃』だった。あれから半世紀。私はここにいる。私は「未来」に到達した。13歳の私は67歳になったのだ。 スマートフォンの通知音が鳴り止まない日々。なにが大切なのかよくわからないメール、リンクを選ぶと後悔するニュースの更新、Twitterに流れる正義と正義の戦い。私たちの一日はこんなものに

  • トランプ次期米国大統領はウクライナ戦争を終結させないだろう: 極東ブログ

    ジョン・ミアシャイマー教授が、12月12日、「グローバルピースTV」(参照)でウクライナで進行中の戦争を終わらせるトランプ大統領の可能性について分析していた。私はトランプ次期米国大統領がこの戦争を終結してくれるのではないかと期待していたが考えを改めるべきだろうと思った。以下、ミアシャイマーの見解をまとめておく。 トランプ大統領が、ウクライナという問題領域が米国の外交政策を根的に変えることになるだろうと発言したことは間違いない。彼はすぐに紛争を終わらせると言っているが、すぐに終わらせるとは思えない。彼は善意を持っているかもしれないが、それは起こらない。その理由は、彼がプーチンが示したこの紛争を解決するための条件を受け入れなければならないからであり、どの米国大統領もそれを決して受け入れないだろうと思っている。 具体的には、プーチンは交渉を始める前に、これは和平合意をまとめるための交渉を始める

  • 情報環境の変化と市民の選択: 極東ブログ

    先日の兵庫県知事選挙や米国大統領選挙の結果に違和感を持つ人々が増えている。そして、その原因としてSNSやYouTubeなどのスマホベースのメディアが批判されることが目立つ。若者が新聞を読まず、正しい情報が広まらないことが選挙結果に影響しているという主張である。一方で、それに真っ向からの反論もある。既存メディアも偏見に満ち、真実を伝えていないというのだ。このような対立は、なにか、この問題の重要な部分を捉えていないように思える。 現代の情報環境 SNSやYouTubeは情報を即時に広範囲に共有できる点で非常に便利であると言っていい。私自身そのなかにすっぽりといる。世界中の出来事やニュースを瞬時に知ることができるという点では、旧来メディアとは変わりないが、その面では、SNSやYouTubeで二番煎じのことが多い。むしろ、旧来メディアでは知ることのできない、奇妙ともいえるディテールがわかることがあ

    dazed
    dazed 2024/11/19
  • 2024年の衆議院議員総選挙はひどいものだったなあと思った: 極東ブログ

    2024年の衆議院議員総選挙はひどいものだったなあと思った。一市民の自分の視線から見ると、まるで投票意思を失わせるような候補者が数人いるだけである。もちろん、自民党候補はいる。どこにもいる。共産党候補と似たようなものだ。で、自民党候補に入れるか。無理。自分は自民党支持者ではないが、自民党の政策にあまり反感はない。というか、今回の「裏金」問題は、すでに述べたが、些細な話でくだらないなと思っている。だが、この自民党候補に票を入れるのは、個人的に相当に抵抗感がある。無理というくらいある。細かくいうと語弊があるが、無理無理。では野党候補かというと、それもげんなりする顔ぶりである。じゃあ、比例代表だけでも投票するかと思ったが、これも、特段支持政党はない。支持したくない政党はあるよ、立民党とかれいわとか、参政党とか公明党とか、まあ、つまり、ほぼ全部。 ひどい選挙になるなあと予想はしていたが、さすがに自

  • 2024年米国大統領選挙の裏にいる億万長者: 極東ブログ

    変貌する政治献金の新時代 2024年の米大統領選は、前例のない規模で政治献金の構造的変化を鮮明に示している。トランプ陣営の14人、ハリス陣営の21人の億万長者支援者たちが、選挙戦の資金的基盤を形成し、両陣営の政策や方向性に大きな影響力を持ちつつあるのだ。トランプ陣営ではカジノ王の未亡人ミリアム・アデルソンが1億ドルを提供し、ハリス陣営ではフェイスブック共同創設者ダスティン・モスコビッツやジョージ・ソロス親子などが巨額の献金を行っている。 この変化の転換点となったのは2010年のシチズンズ・ユナイテッド対FEC裁判である。この判決により、政党が持っていた資金力の中心的役割が個人に移行した。この点について、トム・デイビス元下院議員は、この変化が政治の極端化を加速させていると警告している。従来、政党は中道的な政策を促進する役割を果たしてきたが, その力が失われつつある。 米国では、政治献金の性質

  • AIと人間の共生における知能の退化は避けられないだろう。: 極東ブログ

    ジェフリー・ヒントンの警告 AIと人間の共生における知能の退化は避けられないのではないだろうか。ジェフリー・ヒントンのエピソードから話を切り出したい。2024年にノーベル物理学賞を受賞したヒントンは、AIの安全性や人間の知能の衰退に対する深い懸念を示していた。彼は、教え子でもあるサム・アルトマンが主導するOpenAIが営利目的に傾倒し、AIのリスクを軽視していると批判し、その危険性を強調した。彼の懸念は、AIが持つ高度な操作能力が人間の心理に深刻な影響を与え、人々がAIに依存しすぎることで、自らの意思決定能力や批判的な思考力が失われることにあった。 この懸念は、単なる技術のリスクにとどまらない。AIの進化によって、私たちの社会がどのように変貌し、私たち人間自身がどのように変化していくのか、より深い問題に根ざしている。特に「AIと人間の共生」というテーマを考えるとき、そこには大きなリスクとし

  • ウクライナの農地問題の現在: 極東ブログ

    ウクライナは「ヨーロッパのパンかご」として知られるほど豊かな農業資源を持つ国である。しかし現状、その広大な農地が外国資や新興財閥の手に渡り、小規模農家が厳しい状況に追い込まれているようだ。ここで紹介する、2023年にオークランド研究所(The Oakland Institute)によって発行されたレポート『戦争と窃盗:ウクライナの農地の乗っ取り』(War and Theft: The Takeover of Ukraine's Agricultural Land)には、あまりメディア報道されることがない、この問題の詳細な背景と影響が分析されている。ブロガー視点で気になった点をまとめおこう。 まとめ マイダン革命後、ウクライナの農地の多くが外国資や大規模企業に管理され、土地改革により外資が農地にアクセスできるようになった。 ウクライナの農業生産の50%以上を担う小規模農家は支援不足で困難

  • 脱ドル化の模索というBRICSの野心的構想: 極東ブログ

    2024年10月にロシアのカザンで開催されるBRICS首脳会議(サミット)では、国際金融システムの改革に関する重要な議論が行われる可能性が高まっている。特に注目されているのは、一部で議論されている金を基礎とする共通通貨の可能性についてである。この構想が実現すれば、単なる通貨の話にとどまらず、世界経済の構造そのものを揺るがす可能性があり、日経済にも大きな影響をもたらすだろう。 ここでは、BRICSが推進する「脱ドル化」の背景を探り、その実現可能性を吟味し、将来の予想をしてみたい。また、日経済への波及効果についても考察する。 記事のまとめ BRICSの脱ドル化構想は、国際金融システムに大きな変革をもたらす可能性を秘めている。しかし、その実現には多くの課題が存在し、完全な脱ドル化よりも、多極化された国際金融システムへの緩やかな移行が現実的なシナリオかもしれない。 日を含む世界各国は、この変

    dazed
    dazed 2024/10/01
  • 「世界経済の行方 - AI (LLM) が語る最新動向と展望」: 極東ブログ

    一昨日、昨日と続く東京市場の大暴落と今日の回復に関連して、この市場の変動と世界経済の今後について、AI (LLM) と対話を行い、その対話のログから、インタビュー記事を自動生成してみました。というわけで、以下がその結果です。ヴィンセント博士はAI (LLM) で記者は私です。 「世界経済の行方 - AI (LLM) が語る最新動向と展望」 記者: 日は、経済アナリストのヴィンセント博士をお招きし、世界経済の最新動向と今後の展望についてお話を伺います。ヴィンセント博士、よろしくお願いいたします。 ヴィンセント博士: こちらこそ、よろしくお願いいたします。 記者: まず、最近の日の株式市場の動きについて伺いたいと思います。8月5日に大暴落があり、翌日には回復しました、この急激な変動をどのように分析されますか? ヴィンセント博士: はい、8月5日の日株式市場の大暴落とその翌日の急激な回復は

  • [書評] 戦後フランス思想(伊藤直): 極東ブログ

    私は66歳にもなって自分を大人気なく思う。書『戦後フランス思想』を読んで、ああ、こういう解説は簡素によくまとまっているけど、あの時代の日の空気が感じられないなあ、と思ってしまった。ということを書くのも、大人げないが、書はそんな郷愁をもたらした。と、いうのも、あまり正確ではない。後で触れるが、書は実はとても現代的でもある。 もう少し、大人げない話をしたい。書を読みながら、十代の自分が今も自分の中にいることに気がつく。アルベール・カミュは私の少年期そのものだったからだ。なんかもう自殺しようかなと思っていた中二の私は、確か、白井浩司の書いた、フランス哲学風人生論で、カミュを知った。曰く、『シーシポスの神話』を読みなさい、というのだった。読んだ。哲学の問題は今、自殺するかしないかだとする、書にも引かれているが、その基調は、中二の心を掴んだ。不条理(なんですかコレという笑っちゃうね状況)

    dazed
    dazed 2024/04/24
  • 現代に蘇る『源氏物語』: 極東ブログ

    久しぶりのブログという感じになってしまい、近況というのもなんだが、今年のNHK大河ドラマ『光る君へ』を楽しく見ている。藤原道長と紫式部の若き日の秘められた恋といった、ラノベ(ライトノベル)のような展開も面白いが、そこここに『大鏡』や『小右記』などからの史実に『蜻蛉日記』をまぜたりするのも楽しい。これからは『御堂関白記』や『枕草子』もまぜていくだろうと期待が高まる。『源氏物語』を仄めかす趣向も楽しい。『光る君へ』というタイトル自体この趣きもある。今回の大河ドラマを好むのは私だけではなく、令和六年の『源氏物語』ブームといった印象も受ける。が、この『源氏物語』、一千年も昔の物語の反面、現代の反映もあることも興味深い。連想される一番大きな話題は、五年ほど前に発見された写である。この後続の話はなお興味深い。 発端は五年前、三河吉田藩主・大河内松平家の子孫の実家に源氏物語を書写した写があるとして、

  • [書評] 遺伝と平等 (キャスリン・ベイジ・ハーデン著、青木薫訳): 極東ブログ

    「こののテーマ、つまり、遺伝と平等、にご関心があるでしょ?」と問われた。そのとおりである。貪るように読んだ。書は、科学啓蒙書の翻訳に定評ある青木薫さんの正確で読みやすい訳文であるのだが、内容自体はやや難しく、率直なところ、どちらかというと読みづらかった。でも、これはなるほど、今読まなければならないなのだ、ということはわかった。 書の基的な主張は、2つあるだろう。ごく割り切って言うなら、1つは、平等社会を求めるリベラル派は遺伝子学の知見を優生学として嫌いその達成を認めない傾向があるが、それは誤りであり、平等社会を求めるなら、「遺伝子くじ」ともいえる生まれつきの運不運の存在を認め、その上でこれに科学的な遺伝子学の知見によって向き合わなけれならないということ。2つめは、遺伝子学として語られる内容が単純化されると、実質的には優生学のような謬見に陥りやすいということだ。 このため、書では