物質を構成する最小単位である素粒子の一つ「ミュー粒子」を人工的に加速することに、高エネルギー加速器研究機構などの研究チームが世界で初めて成功した。画期的な顕微鏡の実現や、不完全さが指摘される現代素粒子物理学の標準理論を検証するといった成果が期待できる。加速器としての本格稼働は、茨城県東海村で令和10年度を目指し、米国や欧州、中国などをリードする。 顕微鏡で立体的観察ミュー粒子は身の回りを飛び交い、毎秒1個は手のひらを通り抜けている。近年では火山やピラミッド、東京電力福島第1原発の原子炉などの内部をエックス線画像のように透視する研究で知られる。ただ、いずれも自然界のミュー粒子を用いるため数が少なく、測定に長時間を要したり、対象が小さいと観察できなかったりする難点があった。 これに対し、加速器ではミュー粒子を大量に生成できるため、顕微鏡と組み合わせれば微小な世界も観察できる。さらに厚さ1ミリ程