岸田文雄政権の経済政策に金融市場が厳しい目を注ぐ。この1年で日経平均株価は約5%、対ドル円相場は約3割低下した。分配による格差是正を目指す「新しい資本主義」の具体像が見えてこないことが、市場を失望させている。景気減速懸念が強まる中、岸田政権は物価高や円安など目の前の課題に追われているのが実態だ。 1年前の政権発足を東京株式市場は手荒く歓迎した。日経平均は政権が発足した昨年10月4日を挟み8営業日続落した。 「岸田ショック」と呼ばれる株価下落局面を招いたのは、岸田氏が昨年9月の自民党総裁選で打ち出した金融所得課税の強化だ。多くの金融所得を得る富裕層への課税強化は株式市場には逆風とみなされた。岸田氏は就任1週間後に方針先送りに追い込まれた。