宏池会の今のさまを池田勇人が見たら、どういう言葉を発するだろうか。沢木耕太郎は『危機の宰相』において「林房雄の『随筆池田勇人』の中に、前尾繁三郎の談話として、(池田についての)二つの印象的な事実が書き留められている」ことに着目した。 経済一辺倒であると思われていただけに、池田の知られざる一面であったからだ。一つは日本が米国に負けたら、官吏などやめて地下に潜って抵抗運動をやらなくてならないと、池田と前尾は本気で考えていたというのだ。 もう一つは、実際に天皇の「終戦の詔勅」が発せられると、二人は皇居前に行き、「『官吏の責務を果たし得なかったこと』を天皇にお詫び申し上げた」のであり、占領軍に迎合するのではなく、愛国者としての振る舞いをしたのである。 戦後の日本を吹き荒れた公職追放の結果、出世が遅れていた池田にチャンスがめぐってきたのである。当初から権力欲とは無縁であったから、言いたいことをズバズ