いつかある大新聞社の工場を見学に行ってあの高速度輪転機の前面を瀑布(ばくふ)のごとく流れ落ちる新聞紙の帯が、截断(せつだん)され折り畳まれ積み上げられて行く光景を見ていたとき、なるほどこれではジャーナリズムが世界に氾濫(はんらん)するのも当然だという気がしないではいられなかった。あまり感心したために機械油でぬらぬらする階段ですべってころんで白い夏服を台無しにしたことであった。 現代のジャーナリズムは結局やはり近代における印刷術ならびに交通機関の異常な発達の結果として生まれた特異な現象である。同時に反応的にまたこれらの機関の発達を刺激していることも事実であろうが、とにかく高速度印刷と高速度運搬の可能になった結果としてその日の昼ごろまでの出来事を夕刊に、夜中までの事件を朝刊にして万人の玄関に送り届けるということが可能になった、この事実から、いわゆるジャーナリズムのあらゆる長所と短所が出発するの