第82回 日本人の資産管理、大研究 (1) ~経済学の手法が通用しない日本人特有の心理~ 経営コンサルタント 大前 研一氏 2007年6月20日 わたしが以前から指摘していることだが、日本人には資産管理に関して特有の鈍さがある。例えば長期間にわたって金利が低い状態が続いているのに、金利の高い海外に資産を移さない。使う予定もないまま貯金を続け、死ぬときが一番お金持ちという意味のない蓄財方法。それでいて必ずしも家族に美田を残そうという意識があるわけでもない。いざというときのためにと漠然と考えて、実際には何をもってイザというのか明確には考えてない ―― 日本人の資産管理の下手さなら、いくらでも挙げられる。 この鈍さがあるために、これまでさまざまな経済政策が失敗してきた。外国では通用したマクロ、およびミクロの経済政策が日本で通用しないのだ。バブル崩壊以後、景気回復のためのさまざまな手法が