日本でも有数の眼鏡産地である福井県鯖江市。眼鏡フレームの国内シェアで96%を占めるこの地で、20年以上愚直なまでにその技術を極めていった企業がある。小規模な町工場と呼んでもおかしくないこの企業が、今、世界で活躍しているといったら驚くだろうか。今回は、厳しい市場の中にあって、世界にその名をとどろかせている企業、西村金属を訪れた。 何でもできる、というのは何もできないのと同じ 今をさかのぼること4年前、故郷の鯖江市を離れ、1人東京で働く男性がいた。この男性こそ、後に自分の父の会社である西村金属の常務取締役となる西村昭宏氏だった。ある日、そんな彼の下に突然父が尋ねてきた。「メシでも食べないか」――その誘いの真意はすぐに読み取れた。「家業を手伝えということです」(西村氏)――すでに眼鏡産業が傾きつつある中、西村金属もその歴史の中でどん底のような状況にあったのだ。「家族でがんばらないとやっていけない