前田朗氏批判に先立って、前田氏が(別に前田氏に限らないが)井上清の『「尖閣」列島―釣魚諸島の史的解明』を「過去のもの」として切り捨てる際に、その有力な根拠としている、浦野起央著『尖閣諸島・琉球・中国――日中国際関係史』(三和書籍、2002年/増補版は2005年)を読んできた。初版はしばらく前に読んでいたのだが、増補版は図書館の予約が埋まっていたので、人目を憚りながら増補部分を本屋で立ち読みしてきたのだった(ある書店の軍事エリアに在庫を発見したが、定価は10500円であり、あらゆる意味で購入は論外である)。 結論から言えば、浦野の著書は、ただ井上の論文に対する実証的な反論になっていないというだけでなく、一冊の本としても読むに耐えない代物であったと思う。以下に、これが言いがかりではないことを示していこう。 ●教えて!浦野起央――尖閣=釣魚島(Diaoyu Dao)はほんとに日本の領土なの? 質