山間部を抜けてつかの間の集落へ入る。まるで草むらの上を走っているかのようだ=広島県庄原市東城町(小奴可〜内名) 1日3往復。もはや通勤通学向けとすら言い難いかもしれない。踏切でレールの表面に目をこらすと、微かな銀色の筋を残して赤茶色のサビが浮いていた。それでもカメラを構えていると、一両だけの列車内では、子供たちが運転席の隣に押しかけて楽しそうに景色を楽しんでいるのが見えた。大人の乗客も何気なく外を見ている。JR芸備線東区間のディーゼルカーも、まだまだ捨てたものでもなさそうだ。(文・写真 藤浦淳) 「秘境駅II」(牛山隆信・栗原景共著、メディアファクトリー社刊)に掲載されている内名(うちな)駅。東の起点・新見(岡山県新見市)から始まる鉄路は、城下町の雰囲気を残す東城(広島県庄原市東城町)から北へ向かい、山あいへ入る。備後八幡(やわた)を過ぎると山は深くなり、幾度もトンネルを抜け、川を渡る。集