日本歴史言語学会 『歴史言語学』創刊のお知らせと原稿の募集 日本歴史言語学会 会員各位 会員の皆様にはご清祥のこととお慶び申し上げます。 昨年12月に大阪大学にて開催された日本歴史言語学会第一回大会は、設立直後にもかかわらず誠に盛会でありました。これも一重に会員諸兄のご協力の賜物であります。今後ともわが国の歴史言語学の進展と日本歴史言語学会の充実にお力添えください。 さて、その後検討させていただきまして、本学会の学会誌は『歴史言語学』(Historical Linguistics in Japan )と題することになりました。喜ばしいことに、その創刊号がいよいよ本年初冬に刊行される予定です。 第一回大会で実施したアンケートによりますと、学会誌の公開方法として、冊子を求める声と、今日風の e-ジャーナルを求める声がほぼ半々でありました。両方の要望にお応えすべく、『歴史言語学』は従来の
英語史上,William Caxton (1422?--91) は英語を初めて印刷に付した人物として広く知られている.Caxton は,1476年にウェストミンスターに印刷所を構え,本格的に印刷業を開始した.印刷の起業家として最も大事なことは,誰に対して,何語で書かれたどのような出版物を売るかを明確にすることである.Caxton は王,貴族,富裕な商人に的を絞り,彼らが読みたがっているロマンスや歴史物語を英語で(翻訳し)印刷することに決めた. しかし,この的の絞り方は当時の状況に照らせばギャンブルのようなものだった.Knowles (60--61) が次のように述べている. William Caxton was a businessman who operated for a long time from Bruges, in modern Belgium. At that time th
英語史における印刷術の発明の意義について,スライド (HTML) にまとめてみました.こちらからどうぞ.結論は以下の通りです. 1. グーテンベルクによる印刷術の「改良」(「発明」ではなく) 2. 印刷術は,宗教改革と二人三脚で近代国語としての英語の台頭を後押しした 3. 印刷術は,綴字標準化にも一定の影響を与えた 詳細は各々のページをご覧ください.本ブログの記事や各種画像へのリンクも豊富に張っています. 1. 印刷術の発明と英語 2. 要点 3. (1) 印刷術の「発明」 4. 印刷術(と製紙法)の前史 5. 関連年表 6. Johannes Gutenberg (1400?--68) 7. William Caxton (1422?--91) 8. (2) 近代国語としての英語の誕生 9. 宗教改革と印刷術の二人三脚 10. 近代国語意識の芽生え 11. (3) 綴字標準化への貢献 1
1 初期人類と言語的人類はまったく別もの 人類がアフリカで生まれたことは、いまや常識である。 だけどアフリカのどこで、いつ、どのように生まれたのかということになると、まだ確かなことはわかっていない。どうしてわかっていないのだろう。 そもそも、人類という言葉(概念)が、広すぎるところに問題がある。ラーメンの歴史を知りたいのに、おのおのが自分の好きな麺を論じているのだ。 科学雑誌ですら、「人類の起源」というタイトルで、直立二足歩行する猿人を論ずることもあれば、言葉を獲得した現生人類を論ずることもある。そのために議論が錯綜し、混乱するのだ。人類学者や言語学者も、この問題を放置したまま議論を続けている。 「人類」というひとつの言葉で、「300万年前に直立二足歩行しはじめた初期人類」と、「7万年前に肺の気道の出口である喉頭が食道の途中にまで降下して、母音の発声が可能になった言語的人類」とを区別せずに
ひっそりと消えゆこうとしているヨーロッパの少数民族 西ヨーロッパの少数民族のまとめの続きです。前回は、 フリース人(ドイツ・オランダ) ソルブ人(ドイツ) コーンウォール人(イギリス) アイリッシュ・トラヴェラー(アイルランド) ガリシア人(スペイン) を紹介しました。今回は、スペイン、イタリア、スイスの少数民族です。 6. メルチェーロ(スペイン) Work by Javier cuervo フランコ時代に定住生活に入った出自不明の流浪集団 メルチェーロは、キンキ(quinqui)ともキンキリェーロ(quinquillero)とも言われます。「巡回鋳掛屋」という意味の移動職人集団です。 彼らの出自ははっきり分かっておらず、15世紀にドイツからやってきた銅細工士集団という説や、抑圧によって流浪生活に入ったムーア人の子孫という説もあります。有力なのが、16世紀の飢饉で土地を失ったカスティーリ
1. ノルマン征服 (Norman Conquest) 1066年に起こった英国史上最大の事件 ノルマン人によるアングロサクソン王国の征服 ウィリアム1世「征服王」 (William I the Conqueror) によるノルマン王朝の開始 イングランドの政治,社会,文化が一変 英語にも多大な影響を及ぼした ノルマン人の起源 "Norman", "Normandy", "Norse" (#1568) 「ノルマン」 (= Norman) は古代北欧語の "Norðmaðr" (= Northman) から 8世紀後半からイングランドを苦しめていたヴァイキングの一派 ウィリアム1世の家系 (#2685) したがって,ノルマン征服は,ある意味で2度目のヴァイキングによる侵略とも 1066年 エドワード懺悔王 (Edward the Confessor) の死 (cf. #2620. アングロサ
その存在が埋没する寸前の西ヨーロッパ少数民族 現在の西ヨーロッパの民族問題は「中東や近東、北アフリカからの移民」問題に尽きます。 国の枠組みを破壊するレベルのヤバイ勢いで人が増え続けており、世界の歴史的に見ても後の大転換点となるひとつの大きな潮流となっていると思います。 かつて起こった20世紀の大規模な難民流出、ユダヤ、ベトナム、パレスチナ、ソマリア、ルワンダ、アンゴラといった難民と比較にならないほどの大きな影響を西ヨーロッパ社会に与えるはずです。 そんな中で、人知れず「ヨーロッパ」の中に埋没しようとしている少数民族がいます。西ヨーロッパは実は結構な数の少数民族がおり、カタルーニャ人、ブルターニュ人、ウェールズ人のように地域主義に結びつく強い少数民族もありますが、大抵はひっそりと目立たずグローバル化の中に溶解していこうとしています。 1. フリース人(ドイツ・オランダ) 古代ローマの時代か
前 次 hellog〜英語史ブログ #2411. 英語の <w> = "double u" とフランス語の <w> = "double v"[w][grapheme][alphabet][norman_french][u][v] 英語のアルファベットの23文字目の <w> は,英語では double u と称するが,フランス語では double vé と称する (cf. Italian doppio vu, Spanish uve doble, Portuguese vê dobrado) .この呼び方の違いは,<u> と <v> が同一の文字素として認識されていた時代の混同に基づいている (cf. 「#373. <u> と <v> の分化 (1)」 ([2010-05-05-1]),「#374. <u> と <v> の分化 (2)」 ([2010-05-06-1])) . もともとラテン
第8回 なぜ「グリムの法則」が英語史上重要なのか 1 名詞 father に対して形容詞 paternal 名詞の father(父)に対応する形容詞は paternal(父の,父方の)と習うのが普通ですが,みなさんはこのような関連する単語のペアを学習する際に,違和感を抱いたことはありませんか.どうしてこれほどまでに異なる語形なのだろうか,関連する語なのにそれぞれ暗記するしかないではないかと,文句の1つも言いたくなるかもしれません.一方,2つの語形は異なるとはいえ,何となく似ていると直感する人もいると思います.綴字を眺めていると,father と pater- の部分には対応関係がありそうに感じられます. 広く英語の語彙を見渡すと,このような例は枚挙にいとまがありません.two(2)と d uo(二重奏)は関連した意味をもつ2語ですが,語頭子音には t と d という違いがみられます.t
杉森久英の「国語改革の歴史」に引用されている国語改革反対論者の発言には面白いものが幾つかあります。余り頻繁に孫引きを繰り返すのも気がひけるので、私が全面的に同調したいお二人の発言をメモしておきたいと思います。 田辺万平「漢字憎悪の妄執」(昭和三十五年『国語国字』) 田辺氏の小四のお孫さんが漢字の書き取りテストで二十五点しか取れなかったのだそうです。この書家(だったような気がする…)が確かめてみるとすべて正解、ところが小学校の先生の判断では七十五点をマイナスしなくてはならなかったらしい。「木の字は第二画をはねたから×、返の字は第四画を止めたから×、女の字は第二画の頭がとび出したから×、糸偏の脚部は左から三つ点を打つたから×、口の字は第一画と第二画が少し離れてゐるから×、といふわけで七十五字が×、二十五字が○、そこで二十五点だそうである。…(中略)かくのごとく蚤の糞みたいなところをいぢくり廻
Keyは、人文科学分野・自然科学分野・情報技術分野などに属する対象を、特定の分野にとらわれず様々な角度から解説を行う「雑学事典」です。それぞれが独立しているかのように見える知識と知識を互いに結び付けることにより、知識ネットワークの価値を飛躍的に高めようとする試みのもと、この雑学事典は作成されています。ぜひそれぞれのページからページ、知識から知識へと知識ネットワークを広げ、あなたのひらめきに雑学事典を役立てて下さい。
はてなグループの終了日を2020年1月31日(金)に決定しました 以下のエントリの通り、今年末を目処にはてなグループを終了予定である旨をお知らせしておりました。 2019年末を目処に、はてなグループの提供を終了する予定です - はてなグループ日記 このたび、正式に終了日を決定いたしましたので、以下の通りご確認ください。 終了日: 2020年1月31日(金) エクスポート希望申請期限:2020年1月31日(金) 終了日以降は、はてなグループの閲覧および投稿は行えません。日記のエクスポートが必要な方は以下の記事にしたがって手続きをしてください。 はてなグループに投稿された日記データのエクスポートについて - はてなグループ日記 ご利用のみなさまにはご迷惑をおかけいたしますが、どうぞよろしくお願いいたします。 2020-06-25 追記 はてなグループ日記のエクスポートデータは2020年2月28
中国古典籍データベース (c) 1997.11.13-2007.2.10, KODAMA Noriaki 中国古典をテキストデータベースの形式で提供します。 コンピュータで中国語を処理する方法は,当研究室提供のコンピュータによる中国語処理のページをどうぞ。 中国思想史研究室の書庫 陳暘『樂書』(GIF画像とテキストデータ) 律呂新書 荀子・楽論篇 論語何晏集解 阮籍楽論 漢書藝文志(→Thanks to KATSUYAMA) 後漢書・儒林伝 他サイトのデータベース 中文全文檢索系統 中央研究院計算中心 論語,孟子,墨子,荘子,荀子,韓非子,呂氏春秋,老子,商君書,管子,晏子春秋,孫子 二十五史,十三経経文 抱朴子内篇校釈,荘子集釈.,東観漢記校注,国語,古本竹書紀年輯證,墨子間詁,列子集釈,晏子春秋集釈,四書章句集注,戦国策,老子校釈 新校捜神記,斉民要術校釈,洛陽伽藍記校注,顔
Wolfgang Michel: Japanese Place-Names on Old Western Maps. In: Lutz Walter (ed.): Japan - A Cartographic Vision. Prestel-Verlag, Muenchen, New York 1993, pp.48 - 50. 今日西洋の地図では日本の地名を表記する場合、アメリカ人宣教師J。C。ヘボン (1850ー1911年) が考案した方法を用いている。ヘボンは日本語の音節をローマ字に書き換える方法を考え出し、子音の再生には英語を、母音にはラテン語を当て、その容易さもあってまたたくまに普及した。しかしそれ以前のヨーロッパにおける日本地図は、そのような標準化がなされておらず、そのため同じ地名がさまざまに表記されている。たとえば九州の肥前は「Figen」、「Fiien」、「F
初出:『日本語研究センター報告』第6号,特集「小笠原諸島の言語文化」1998(大阪樟蔭女子大学日本語研究センター発行) 0. 世界中に見られる言語接触と接触言語 世界の多くの言語は他の言語との接触によって生まれた言語である。むしろ、言語接触を起し、他の言語体系の影響をまったく受けていない言語はおそらく存在しないであろう。人間のさまざまな民族の歴史は他の民族との接触の繰り返しの歴史である。そのために、この地球上で話されている言語のほとんどは、それぞれの長い歴史の中で、何らかの形での言語接触によってその姿を大きく変えていると考えられる。 英語は、千年近く前に、フランス語から大量な単語を取り入れた。このように他言語から導入された単語を借用語(borrowings)と言う。現在の英語では、これらのフランス語起源の借用語を一つも使わずに会話をするのがほとんど不可能なほど、それらは英語の不可欠な一
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