「なるほど、それで我が社へお越しになったと?」 「ええ、まぁウチではそのような調査がメインですので・・・」 「しかし残念でしたね。どうやら無駄足を踏ませてしまったようで」 男は人の良さそうな、満面の笑みで頷いた。 浦賀惣一。29歳。大学時代にサークルのメンバーとともに会社を創設。順調にその会社は成長し、今のITコンサルティング会社『ネットウォーキング』社に到る。 その創立者にして社長である浦賀は再び窓から街を見下ろす。60階から見下ろす夕暮れの街はまるで箱庭のようだ。 「いやそうでも無いですよ、人当たりが良さそうな相手が意外や意外、真犯人てことも」 振り返った浦賀の目に笑みはもう無かった。 「資料をご覧になったでしょう?我々に不正をする余地は無い」 タバコを灰皿に戻すと、浦賀は俺の隣に歩み寄った。 「それに・・・あなたは私が見る限り賢そうな人だ。私が言いたいこと、分かるでしょう?」 再び笑