記事:筑摩書房 original image: asiandelight / stock.adobe.com 書籍情報はこちら 『源氏物語』には、とくに主人公の源氏の場合、当時のまともな恋や結婚の形というのがきわめて少ない。 平安貴族のまともな恋や結婚とは、まず男が、女房などの噂話から、これぞと思う女がいた場合、「垣間見」といって、あらかじめ先方の女の召使や乳母や母親と話をつけて、垣根のすき間などから女を覗き見させてもらう。女の側でも、あるていど容姿を知っておいてもらったほうが、セックスしてから別れを迎えるより傷が少ないので、垣間見用に垣根の穴などを用意していたほどだ。そうして「好みの女」となれば、男のほうから恋文を出す。一回くらい返事がなくても、めげずに文を送り続ける。女側でも、男の文面はもちろん、筆跡や紙、文の使いなどから相手のセンスを推しはかり、嫌ならそのまま返事を出さなければいいし