謎解きはディナーのあとで [著]東川篤哉[掲載]2010年11月7日[評者]瀧井朝世(ライター)■若手執事の“毒舌”名推理 「この程度の真相がお判(わか)りにならないとは、お嬢様はアホでいらっしゃいますか」――毒舌をふるう執事が名推理を披露する連作短編集が、刊行後あっという間に11万部を突破した。 主人公は新米刑事の宝生麗子。財閥グループの令嬢でもある彼女が難事件に直面するたびに、事のあらましを自分に仕える執事の影山に語って聞かせる。すると彼は冒頭のような暴言を発した後、あっさりと犯人を言い当てるのだ。いわゆる安楽椅子(あんらくいす)探偵モノ。 ユーモアを交えた本格推理小説に定評のある著者だが、ここまではじけたキャラクター設定は珍しい。「執事を探偵役に、とは東川さんが温めていたアイデア。その意外な設定と、著者ならではの笑いのセンス、本格ミステリーの書き手としての技量とが、見事な化学反応を起