昨年11月。投手コーチの高津臣吾は、就任1年目のシーズンを、悔恨とともに振り返った。 「選手を大人扱いしすぎてしまった。もっと口出ししてもよかったのかな、と思う」 日米通算313セーブを記録した高津が理想としていたコーチ像は「選手を気持ちよく働かせる存在」。むやみに手を加えることを良しとしない思いがあった。だがそれには選手が野球観を確立していることが大前提。才能と個性が輝いていた自分たち黄金時代の投手陣と、12球団ワーストの防御率4・62を記録した昨季の投手陣とは、かけ離れていた。 抜本的な改革に乗り出したのは秋季キャンプ。参加した13投手全員が、初日からブルペンで100球を超える投げ込み。ただ投げさせるだけでなく、各自の課題と克服の道筋を具体的に示した。 徳山はセットポジションの制球、石山はシュート、秋吉にはシンカーを教えた。今季ブレークした下手投げの山中は、右手首の角度をマンツーマンで