人は、選り好みをする動物だ。食べものに対する好き嫌いも、個人によって違いがある。肉料理が好きな人もいれば嫌いな人もいるし、野菜が好きな人もいれば嫌いな人もいる。また、同じ麺類でもラーメン派もいれば日本そば派もいる。 こうした食に対する好き嫌いや嗜好性は、私たち人々の個性を決める要素とも言えそうだ。でも一体、食べものに対する好き嫌いや嗜好性はどのように起きるのだろうか。 今回は、食の好き嫌いに関する疑問を、大阪大学大学院人間科学研究科の八十島安伸氏に投げかけてみた。八十島氏は、人や動物がどうしてその行動を取るのかを、脳や体の生理のメカニズムの観点から解こうとする行動神経科学を専攻している。動物にとって、生きる上で極めて重要な「食べる」という行為には、とりわけ好き嫌いが深く関わってくるという。そこで八十島氏は、「食べる」という行動を特に研究対象としてきた。 前篇では、私たち人を含む動物が、どの