先の芥川賞でこれを評価するのしないので意見が真っ二つに割れたのは、円城塔「これはペンです」でした。 文壇はいまや円城党と反円城党の二大政党制に移行しているといっても過言ではないでしょう。*1 なぜ円城塔はそこまで受け入れがたいのでしょうか。あるいはなぜ一部で熱烈に支持されているのでしょうか。それは彼が自然現象としての物書きたらんとしているからです。 もともと円城塔は作家になる気なんかさらさらなく、現に生活のために書いてると公言しています。というのも、彼は東大の院で物理学を研究していた研究者だったのです。しかも研究テーマは言語でした。人間という自然現象が言語を扱えている以上、人間以外の構造においても自ずから言語を発するような、そうした初期設定はあるのではないか、ということを探求していたのです。 たぶんこうした視点が、文壇において受け入れがたい原因なのでしょう。いわゆる「文学」においては人間の