自然科学分野で多くのノーベル賞受賞者を輩出し、公立中学校に通う生徒の7割以上が学習塾に通う日本を、著者は教育劣位社会と呼ぶ。それは、日本のGDPに占める公財政教育支出の割合がOECD諸国の中で最低水準にあり(一般政府総支出に対する割合でも同様)、国民の世論も限りある財源を教育に配分すべきだとは考えていないからだ。 本書は、教育学と経済学の狭間に埋もれてしまいがちな教育費・費用負担・財政・税金にまつわる「教育の経済学」を、世論という切り口から追究していく。そのため本書の焦点は、公教育のあるべき姿の模索や個別の教育施策の投資効率検証ではなく、医療や介護など教育支出以外とのトレードオフ関係の中で、日本人がどの程度教育を重要視しているかを確かめることに当てられている。教育にまつわる世論を深堀りすることで、世論がどのように形成されるのか、世論はどれほど不安定で移ろいやすいものなのか、そして世論と政策
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