「風呂屋の絵」をクールに実現する 伊藤忠商事の山内務は「絵空事」を描くのを得意とする。絵空事とは山内流の言い方で、将来の事業計画をA4・1枚にまとめたものだ。その中身はあまりにも壮大なので、ある役員はあきれながら「おまえの絵は、つねに風呂屋の壁に描かれた富士山だ」と評した。 そのときは役員の説得に失敗したが、山内は同僚にこっそりこう話した。 「調べたんだけどさ、風呂屋に富士山の絵を描けるのは、日本に2人しかいないんだぜ」 伊藤忠は2011年度連結決算で過去最高となる3005億円の純利益を計上した。背景には資源高の追い風と、繊維や生活資材などの「非資源部門」の好調がある。山内は12年4月に約500億円の投資案件をまとめた。一貫して歩んできた「非資源」の紙パルプでは過去最大の案件である。投資先は世界最大級の針葉樹パルプメーカー、フィンランドのメッツァファイバー社(以下メッツファイ)だ。発行済み