「地域包括ケアシステム」とは、簡単に言えば、高齢者が自分らしく暮らせるように支えるシステムのことです。病院医療もまた、そのシステムの一部をなしています。これまで病院に期待される役割とは、入院治療を必要とする患者さんを断らないことでした。その象徴が「断らない救急医療」であり、世界に誇るべきレベルで日本は実現してきたと思います。 ただ、そのアクセスを保証してきた結果として、病院医療が水膨れのようになっていることを率直に認めるべきでしょう。そして、行き場のない高齢者が病院のベッドに寝かされ、入院が長期化するにつれ医療依存が高まっているのです。ゼロリスクを求める風潮により、慣れない入院生活で不穏となる高齢者への鎮静剤が増量され、転倒予防のための身体拘束が黙認(要求)され、1日中ベッドに寝かされたままで身体機能が廃絶してゆきます。また、食事量が不足しているからと点滴され、やがて経鼻胃管が挿入され、そ