紙パックのない掃除機や羽根のない扇風機をはじめとしたデザイン性の高い斬新な家電製品で世を驚かせてきたダイソン。そのアイデアの源泉を探るべく、新設された研究所を訪ねた。 紺地のシャツにスニーカー姿のジェームズ・ダイソン(69)は、新しい極秘の研究所「D9」を覆う反射ガラスに鼻を押しつけた。鏡で覆われたような2階建てのビルの中では、エンジニアたちが何をしているのか見えない。 「ちゃんと働いてくれているといいんだけれど」 ダイソンは、そう満足気にくすりと笑った。 その日は「D9」への引越しの日で、建物の中では数十人の若手エンジニアが荷ほどきをしていた。彼らの仕事は、この研究施設で大胆な実験を行い、失敗し続けること。それを会社が支給する“黄色と黒のノート”に逐一記録することー。そのノートが、将来的な実験と失敗、そして特許訴訟で役立つ武器のベースとなるのだ。 果てしなく続く失敗のサイクルが、画期的な