鳥たちの驚異的な感覚世界 作者: ティム・バークヘッド,沼尻由起子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2013/03/08メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 本書は鳥類学者で行動生態学者でもあるティム・バークヘッドによる鳥類の感覚の至近メカニズムについての本だ.原題は「Bird Sense: What It's Like to Be a Bird」.この副題はもちろん哲学者ネーゲルによる有名な問いかけ「コウモリであるとはどのようなことか?」を意識しているもので,ネーゲルは意識の主観性を問題にし,「この問いに答えることはできない」と主張しているのだが,バークヘッドは最近のリサーチをまとめると結構いろいろなことがわかっていて,厳密にはネーゲルのいうとおりだとしても質問の角度を変えればおぼろげながら答えられるといってもいいのではないかと示唆しているのだ. 行動生態学は
鳥類学者 無謀にも恐竜を語る (生物ミステリー) 作者: 川上和人出版社/メーカー: 技術評論社発売日: 2013/03/16メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (21件) を見る 本書は技術評論社の「生物ミステリー」シリーズの最初の一冊.本の内容は書名そのままで,鳥類学者の語る恐竜論だ. 専門分野の本ではないということで,リラックスして自由に書いているようで,怒濤のごとく挟まれたくすぐりが恐竜本としては異彩を放っている.恐竜の生態については余りよくわかっていないのだからかなり自由に推測してもかまわない分野の一つだろう.そして鳥類も広義の恐竜*1に含まれるのだから,鳥類学者が自分の専門的な知識から非鳥類恐竜の生態を類推するのは筋が通っている*2. 本書は「はじめに」がなかなか小粋だ.ある猛禽らしい骨格標本の図を示し,いかにもタカかハヤブサのようだが,実はフクロウであると
4月12 飯倉章『黄禍論と日本人』(中公新書) 7点 カテゴリ:歴史・宗教7点 「アジア、そしてその中で近代国家として勃興した日本は欧米諸国からどのように見られていたのか?」 この問いに対して欧米の新聞や雑誌に載った諷刺画を見ることによって答えようとしているのがこの本。日清戦争から第1次世界大戦までの日本のイメージの変遷と、「黄禍論」がいかなるものであったかがわかります。 最近、坂野徳隆『日本統治下の台湾』(平凡社新書)など、諷刺画をあつかった新書をいくつか見かけるようになりましたが、この本の特徴は一つの雑誌や一つ の国ではなく、ヨーロッパ、アメリカ、さらにはオーストラリアまでさまざまな国の新聞や雑誌から日本についてあつかった諷刺画を集めてきている所。そのお かげで、日本のイメージの変遷だけでなく、当時の国際情勢も見えてきます。 例えば、「黄禍論」を言い出したのはドイツの皇帝ヴィルヘルム2
川田稔『戦前日本の安全保障』(講談社現代新書、2013年) 日清・日露戦争を勝ち抜いた日本は中国大陸での特殊権益を確保、アジアにおける大国として国際的な地位を向上させた一方、中国への急速な進出は列強からの警戒心をも招いた。とりわけ国際的な大国として突出した影響力を発揮し始めていたアメリカとの関係が大きな課題となる。本書では、山県有朋、原敬、濱口雄幸、永田鉄山という4人のキーパーソンが抱懐していた国際認識と外交・安全保障構想について検討することを通して、当時の日本が直面した政策的対立軸が整理される。それは、対中関係・対米関係をにらみながら、国際協調路線を取るのか、それとも自主国防路線でいくのか、という選択肢に集約されるだろう。 現在の視点からその是非はともかくとして、中国大陸における権益を維持しつつさらなる進出を図るのが当時の日本が国策を決める前提であった。パワーポリティクスの観点を持つ元老
高橋和夫『イランとアメリカ──歴史から読む「愛と憎しみ」の構図』(朝日新書、2013年) イラクのフセイン政権崩壊、「アラブの春」といった激動の中、シリアの内戦が膠着状態にあることに顕著なように先行きがますます不透明になりつつある中東情勢。敵/味方の関係が複雑に入り組んだパズルを読み解くのはなかなか容易ではない。核開発疑惑、イスラエルとの一触即発の対立、こうした問題からアメリカの対中東政策で最もナーバスなのが地域大国イランの存在である。実はイラクやアフガニスタンの安定化を図る上でイランとアメリカが協力できる余地もあったのだが、実際にはすれ違ったままだ。イランの政治外交が持つ複雑な性格を踏まえておかないと、中東情勢の理解は表面的なもので終わってしまう。本書は、そうしたイランの「複雑さ」を歴史的な背景から捉えなおそうとしており、格好な入門書である。 1979年以降のイラン・イスラム革命自体のプ
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