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ブックマーク / morningrain.hatenablog.com (34)

  • 東島雅昌『民主主義を装う権威主義』 - 西東京日記 IN はてな

    「民主主義」の反対となる政治体制というと「独裁」が思い浮かびますが、近年の世界では金正恩の北朝鮮のようなわかりやすい「独裁」は少なくなっています。 多くの国で選挙が行われており、一応、政権交代の可能性があるかのように思えますが、実際は政権交代の可能性はほぼ潰されているような体制の国がけっこうあります。 独裁からこういった選挙があるけど政権交代の可能性がほぼない国までひっくるめて政治学では「権威主義」、「権威主義体制」と言い、近年では今井真士『権威主義体制と政治制度』、エリカ・フランツ『権威主義』のように権威主義を分析したや、川中豪『競争と秩序』のように民主主義と権威主義の狭間で動くような国(東南アジアの国々)を分析したも出ています。 こうした中で書は権威主義体制の戦略、特に権威主義体制における選挙の利用について分析したになります。 権威主義体制に選挙は必要ないような気もしますが、先

    東島雅昌『民主主義を装う権威主義』 - 西東京日記 IN はてな
  • マンサー・オルソン『集合行為論』 - 西東京日記 IN はてな

    集団と集合財(公共財)の関係を論じた古典的著作。やはり読んでおくべきかと思って読んでみました。 ただ、O・E・ウィリアムソン『市場と企業組織』を読んだときにも思いましたけど、完全に古典というわけでもない少し古めのを読むと、文脈や著者は想定している論敵の理論といったものがわからずに、内容を掴むのがやや難しいですよね。 というわけで、以下では「なるほど」と思った部分を簡単に紹介します。 目次は以下の通り。 序 章 第1章 集団と組織の理論的考察 第2章 集団規模と集団行動 第3章 労働組合と経済的自由 第4章 国家と階級の伝統理論 第5章 伝統的な圧力団体論 第6章 「副産物」理論と「特殊利益」理論 1971年版の補遺 書が問題としている1つのポイントは、集合財の獲得を目指す集団において、小集団では構成員の共通の利益は達成されやすいが,大集団では達成されにくいというものです。小集団であれば

    マンサー・オルソン『集合行為論』 - 西東京日記 IN はてな
  • 善教将大『大阪の選択』 - 西東京日記 IN はてな

    今年10月の総選挙で躍進を遂げた維新の会、特に大阪では候補者を立てた選挙区を全勝するなど圧倒的な強さを見せました。結成された当初は「稀代のポピュリスト」橋下徹の人気に引っ張られた政党という見方もあったと思いますが、橋下徹が政界を引退してもその勢力は衰えていません。 しかし、その維新の会も大阪都構想をめぐる住民投票では2015年、2020年と2回続けて敗北しました。維新の人気が下り坂になっているわけではないのに、看板政策で2度にわたって躓いたのです。 この1回目の住民投票を中心に分析したのがサントリー学芸賞も受賞した著者の前著の『維新支持の分析』でした。 前著では維新への支持は「弱い支持」であると位置づけた上で、住民投票の否決に関して、「すなわち態度変容を生じさせやすい維新を支持していた大阪市民が、特別区設置住民投票の特異な情報環境下で、自らの批判的な志向性に基づき熟慮した結果、賛成への投票

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  • ヤン・ド・フリース『勤勉革命』 - 西東京日記 IN はてな

    副題は「資主義を生んだ17世紀の消費行動」。タイトルと副題を聞くと、「勤勉革命なのに消費行動?」となるかもしれません。 「勤勉革命」という概念は、日歴史人口学者の速水融が提唱したものです。速水は、江戸時代の末期に、家畜ではなく人力を投入することで収穫を増やす労働集約的な農業が発展したことを、資集約的なイギリスの産業革命と対照的なものとして「勤勉革命」と名付けました。 書によると、この労働時間の増大は17世紀後半のオランダにも見られるといいます。著者は、およそ1650〜1850年の時期を「長い18世紀」と呼んでいますが、この時期、世帯単位の労働時間は増えていきました。 この時期のオランダで「勤勉革命」などと言うと、マックス・ウェーバーを読んだ人であれば「プロテスタンティズムの影響?」と思うかもしれませんが、著者が書で指摘する要因はずばり「消費」です。 この時期のオランダでは、陶器

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  • 坂口安紀『ベネズエラ』 - 西東京日記 IN はてな

    副題は「溶解する民主主義、破綻する経済」で、中公選書の1冊になります。 ベネズエラに関しては、コロナ前に経済がほぼ崩壊しているといったニュースが流れていました。その後、コロナ禍の影響でベネズエラに関するニュースは減っていますが、この状況で経済が好転しているとは思えません。 ただ、それにしても産油国であるベネズエラの経済がどうしてここまで悪化してしまったのでしょうか? ベネズエラは世界最大の石油埋蔵量を誇る産油国であり、天然ガスやボーキサイトなどの資源も豊富です。実際、ベネズエラは80年代なかばまではラテンアメリカでもっとも豊かな国の1つで、民主体制を維持していました。 しかし、2014年以降の経済状況は特にひどく、2014年から7年連続のマイナス成長、しかも2017年からはマイナス二桁の成長でGDPは3年間でほぼ半減しました。国民の貧困率は9割を越え、産油量もチャベス政権誕生前の1日あたり

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    judgeer 2021/02/26
  • 駒村圭吾・待鳥聡史編『統治のデザイン』 - 西東京日記 IN はてな

    憲法というと、どうしても日では9条と人権をめぐる条項に注目が集まりがちですが、国会、内閣、裁判所、地方自治といった日の統治のしくみを決めているのも憲法です。 ケネス・盛・マッケルウェインは日国憲法が他国の憲法に比べて条文数も文字数も少なく、規律密度が低いことを明らかにしましたが、そのせいもあって、90年代以降の、選挙制度改革、省庁再編、司法改革などは、憲法改正を行わずに可能になりました。 しかし、参議院改革などを行おうとすれば憲法の規定が問題になります。ある意味で、憲法に具体的な規定のあるぶんが改革されずに残ったという面もあるのです。 そんな憲法をめぐる問題に対して、政治学者と憲法学者が挑んだのが書になります。構成としては、まずは政治学者が憲法の規定にとらわれずに各分野の改革について分析した後、それへのリプライという形で憲法学者が憲法上の位置づけや課題を論じる形になっています。 目

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  •  砂原庸介『分裂と統合の日本政治』 - 西東京日記 IN はてな

    長らく自民党の一党優位性がつづいた日政治は、90年代の小選挙区比例代表制の導入によって政権交代が可能性が高められ、実際に2009年には民主党によって政権交代がなされました。ここまでは選挙制度の改革はその目的を果たしたと言ってもいいでしょう。 ところが、2012年に政権を失うと民主党はその勢力を大幅に後退させ、再び自民党の一党優位性とも言える状況が出現しています。 なぜ、二大政党制を志向して制度改革がなされたのに二大政党の一方の極(自民党に対抗する野党)が育たないのか? この答えとして、小選挙区比例代表制の比例代表部分の存在、参議院の存在、政策的な難しさなどがあげられてきましたが、こので注目するのは地方政治です。 選挙制度改革によって衆議院の選挙制度は中選挙区制から小選挙区比例代表制へと変化しましたが、地方政治においては中選挙区制(より専門的に言うとSNTV(単記非移譲式投票))が継続

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    judgeer 2020/05/10
  • 谷口将紀『現代日本の代表制民主政治』 - 西東京日記 IN はてな

    書では1ページ目にいきなり下のようなグラフが掲げられており、「この図が、書の到達点、そして出発点である」(2p)と述べられています。 グラフのちょうど真ん中の山が有権者の左右イデオロギーの分布、少し右にある山が衆議院議員の分布、そしてその頂点より右に引かれた縦の点線が安倍首相のイデオロギー的な位置です。 これをみると、国民の代表である衆議院議員は、国民のスタンスよりもやや右に位置しており、衆議院議員から選出された安倍首相はさらに右に位置しています。 どうしてこのようなズレがあるにもかかわらず、安倍政権は安定しているのか? それが書が答えようとする問いです。 書は、著者と朝日新聞社が衆議院選挙や参議院選挙のたびに共同で行っている「東京大学谷口研究室・朝日新聞社共同調査」をもとに、各政党、各議員のイデオロギー位置を推定し、さらに有権者への調査を重ねていくことで、「小泉以降」の日政治

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    judgeer 2020/05/07
  • 岡奈津子『〈賄賂〉のある暮らし』 - 西東京日記 IN はてな

    副題は「市場経済化後のカザフスタン」。中央アジアのカザフスタンを舞台に人々の生活の間に賄賂がどのように根を下ろしているのか、人びとはそれをどう感じているのかということを探ったになります。 途上国において、賄賂がものを言うと話はよく聞きますし、賄賂を始めとした腐敗や不正が経済成長を阻んでいるという話も聞きます。 では、実際に賄賂がさかんに使われている国における生活はどのようなものでしょうか? 書では、多くの人々へのインタビューを通じてカザフスタンにおける驚くべき実態を明らかにするとともに、賄賂が組み込まれた社会の仕組みを明らかにしています。 目次は以下の通り。 第1章 中央アジアの新興国カザフスタン 第2章 市場経済化がもたらしたもの 第3章 治安組織と司法の腐敗 第4章 商売と〈袖の下〉 第5章 入学も成績もカネしだい 第6章 ヒポクラテスが泣いている カザフスタンと聞いてもあまりピン

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    judgeer 2020/05/02
  •  有泉貞夫『星亨』 - 西東京日記 IN はてな

    先日読んだ松沢裕作『自由民権運動』(岩波新書)の巻末で書が紹介されており、「運動や政治にかかわって生きる、とは何を意味するのかについて思索をめぐらす際に、ぜひ手に取ってほしい一冊である」(228p)と書かれていたので手に取って読んでみたのですが、なるほど、これは面白い。 自由民権運動という「運動」を、「組織」へとまとめあげた豪腕・星亨の手腕と、星の時代からずっと続いている日の政党政治の問題点が見えてきます。 評伝ということで、このでは星の生い立ちから語られています。 星はペリー来航直前の1850年に生まれたとされています。星の父は佃屋徳兵衛という左官の棟梁でしたが、酒で身を持ち崩し、江戸市中を転々とする状態でした。星の上の姉は品川宿に女郎として売られてしまう状態で、「貧民」といっていい出自でした。 江戸時代の身分制度のもとでは、星が世に出ることはなかったでしょうが、母のマツが医者で

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    judgeer 2020/04/23
  • 佐藤卓己『『キング』の時代』 - 西東京日記 IN はてな

    『キング』というと関東大震災以後の大衆文化を代表するものとして日史の教科書にも登場しています。ただし、100万部を売ったということが紹介されているだけど、その具体的な中身や人気の秘訣については知らない人も多いと思います。 そんな『キング』について、『言論統制』や『ファシスト的公共性』などで知られる佐藤卓己が持ち前の調査力を発揮して論じた。原著は2002年の出版ですが、今回岩波現代文庫に入りました。 「はじめに」に、 たしかに「政治的正しさ」のアリバイ作りとなるファシズム研究=批判は量産されたが、自らがファシストになる可能性まで念頭においた研究はどれほど存在するのだろうか。(xii p) 国民国家批判をつきつめれば「一億遭難民化のススメ」に行く着くが、幸福な難民はおそらく一部の強者にすぎない。弱さの糾弾は、強者のみを正当化する政治に至る。それこそが、ファシズムとは言えまいか。(xii〜x

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    judgeer 2020/04/05
  •  大塚啓二郎『なぜ貧しい国はなくならないのか』 - 西東京日記 IN はてな

    シカゴ大学でノーベル経済学賞を受賞した農業経済学者のセオドア・シュルツに学び、その後も開発経済学、農業経済学の分野で活躍している著者による開発経済学の入門書。 サックスとイースタリーの論争や、アビジット・V・バナジー、エスター・デュフロ『貧乏人の経済学』など、開発経済学経済学のホットなトピックの一つとなっています(先日紹介したレイモンド・フィスマン+エドワード・ミゲル『悪い奴ほど合理的』も開発経済学でした)。 しかし、著者はこのでサックスの『貧困の終焉』とイースタリーの『傲慢な援助』、そして『貧乏人の経済学』をとり上げ、それなりの意義を認めつつも(サックス対イースタリーではどちらかというとイースタリーに共感している)、「この3冊の書物に共通している欠陥は、経済発展のメカニズムについての分析が皆無であることだ」(111p)と手厳しく述べています。 そしてこれらのは「開発経済学」の

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    judgeer 2020/04/05
  • 松尾隆佑『ポスト政治の政治理論』 - 西東京日記 IN はてな

    面白く読みましたが、なかなか紹介の難しいでもあります。 まず、タイトルを見ても中身がわからない。これが「ポスト代議制の政治理論」とかであれば、「ああ、直接民主制その他を語ったなのか」と想像がつきますが、「ポスト政治」という言葉は一般の人にはわかりにくいです(「ポスト学校の教育理論」なら中身が想像できるが、「ポスト教育教育理論」では想像できないのと同じ)。 わかりにくいタイトルを補うのが副題ですが、この副題が「ステークホルダー・デモクラシーを編む」。これを読んでも多くの人はイメージが掴めないでしょう。自分もわかりませんでした。 「ステークホルダー」という言葉は企業経営で使われる言葉で、多くの人が一度くらいは聞いたことがある言葉だと思います。ただ、それと「デモクラシー」の結びつきと言われてもいまいちピンとこないでしょう。 この「わからなさ」に関しては、第1章を読めばほぼ解消されると思いま

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    judgeer 2020/01/14
  • 2019年の本 - 西東京日記 IN はてな

    毎年恒例のエントリー。今年はまず小説以外の(と言ってもほぼ社会科学のですが)を読んだ順で9冊紹介します。 小説に関しては去年は順位をつけませんでしたが、今年は順位をつけて5冊紹介します。 ちなみに新書のほうは以下に今年のベストをまとめてあります。 blog.livedoor.jp ・ 小説以外の ジョージ・ボージャス『移民の政治経済学』 移民は受入国にどんな影響をあたえるのでしょうか? 経済を成長させるのでしょうか? それとも減速させるのでしょうか? あるいは移民の受け入れによって損する人と得する人が出てくるのでしょうか? このアメリカのハーバード・ケネディスクールの教授で、長年移民について研究してきた著者が、移民のもたらす影響をできるだけ詳しく分析し、上記の問に答えようとしたになります。 日でもこれから「移民は是か非か」、「移民は日経済を救うのか?」といった議論がなされて

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    judgeer 2019/12/29
  • 猪俣哲史『グローバル・バリューチェーン』 - 西東京日記 IN はてな

    書の冒頭にある問いは「iPhoneはメイド・インどこか?」というものです。USAでしょうか? チャイナでしょうか? それとも別の国でしょうか? 正解は「Designed by Apple in Califoronia, Assembled in China.」というものです。 iPhoneは一つの典型的な例ですが、現在の工業製品はさまざまな国から部品が集められ、中国などで組み立てられ、そして世界各地へ出荷されています。この国境を超えたサプライチェーンがグローバル・バリューチェーンです。 書は、このグローバル・バリューチェーン(以下GVC)の実態とメカニズムを明らかにするとともに、副題に「新・南北問題へのまなざし」とあるように、今後の南北問題も展望しています。米中貿易摩擦を読み解く知見もありますし、非常に刺激的ですし勉強になるです。 目次は以下の通り。 第1章 GVCとは何か 第2章

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    judgeer 2019/11/13
  • ローレンス・サマーズ、ベン・バーナンキ、ポール・クルーグマン、アルヴィン・ハンセン著/山形浩生編訳『景気の回復が感じられないのはなぜか』 - 西東京日記 IN はてな

    サマーズが口火を切り、バーナンキやクルーグマンとの間で2013〜15年にかけて行われた長期停滞論争を山形浩生が訳しまとめたもの。アルヴィン・ハンセンは1930年代に長期停滞という概念を提唱した経済学者で、このにはその演説「経済の発展と人口増加の鈍化」の抄訳も収録されています。 目次は以下の通り。 はじめに――長期停滞論争(山形浩生) 1 アメリカ経済は長期停滞か?(ローレンス・サマーズ) 2 遊休労働者+低金利=インフラ再建だ! ――再建するならいまでしょう! (ローレンス・サマーズ) 3 財政政策と完全雇用(ローレンス・サマーズ) 4 なぜ金利はこんなに低いのか(ベン・バーナンキ) 5 なぜ金利はこんなに低いのか 第2部――長期停滞論(ベン・バーナンキ) 6 なぜ金利はこんなに低いのか 第3部――世界的な貯蓄過剰(ベン・バーナンキ) 7 バーナンキによる長期停滞論批判に答える(ローレン

    ローレンス・サマーズ、ベン・バーナンキ、ポール・クルーグマン、アルヴィン・ハンセン著/山形浩生編訳『景気の回復が感じられないのはなぜか』 - 西東京日記 IN はてな
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    judgeer 2019/09/04
  • アンドレアス・ヴィルシング、ベルトルト・コーラー、ウルリヒ・ヴィルヘルム編『ナチズムは再来するのか?』 - 西東京日記 IN はてな

    AfD(ドイツのための選択肢)の躍進などによって混迷が深まっているドイツ政治ですが、そうなると取り沙汰されるのが、こののタイトルともなっている「ナチズムの再来」です。 確かに2017年の総選挙でAfDは一気に94議席を獲得し、既成政党への不満の受け皿となりましたが、2019年の欧州議会選挙においてAfDの得票は11%ほどにとどまり、その勢いは薄れているようにも思われます。 ただ、それでも「ナチズムの再来」が取り沙汰され、それが世界的な注目を集めるのがドイツという国家の宿命なのでしょう。 書はそんな声に対して、ドイツ歴史学者や政治学者が集まってつくられたものです。もともとドイツのバイエルン放送と『フランクフルター・アルゲマイネ新聞』でメディアミックス的に展開されたエッセイを再構成したもので、20ページ弱の論考が並んでおり、読みやすいボリュームとなっています。 原題は「ヴァイマル状況? 

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    judgeer 2019/08/19
  • ジェリー・Z・ミュラー『測りすぎ』 - 西東京日記 IN はてな

    民間企業だけでなく、学校でも病院でも警察でも、そのパフォーマンスを上げるためにさまざまな指標が測定され、その指標に応じて報酬が上下し、出世が決まったりしています。 もちろん、こうしたことによってより良いパフォーマンスが期待されているわけですが、実際に中で働いてみると、「こんな指標に意味があるのか?」とか「無駄な仕事が増えただけ」と思っている人も多いでしょうし、さらには数値目標を達成するために不正が行われることもあります。 この現代の組織における測定基準への執着の問題点と病理を分析したのが書になります。著者は『資主義の思想史』などの著作がある歴史学部の教授で、大学の学科長を務めた時の経験からこのテーマに関心をもつことになったそうです。文190ページほどの短めのですが、問題を的確に捉えていますし、紹介される事例も豊富です。さらに、現在「新自由主義」という曖昧模糊とした用語で批判されてい

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    judgeer 2019/08/19
  • クリストファー・R・ブラウニング『増補 普通の人びと』 - 西東京日記 IN はてな

    ナチ・ドイツによるユダヤ人の虐殺について、多くの人はアウシュビッツ−ビルケナウに代表される絶滅収容所による殺害という印象が強いと思います。 そこでは、工場における分業のような形で毒ガスによる虐殺が行われ、多くのドイツ人が自らの職務を果たすことで虐殺が完成しました。アレントはそうした官僚的な虐殺者としてアイヒマンを描き出し、それに「悪の陳腐さ」という言葉を与えました(実はアイヒマンは筋金入りの反ユダヤ主義者が法廷での「平凡さ」は演技だった可能性が高い。野口雅弘『忖度と官僚制の政治学』参照)。 しかし、ユダヤ人の虐殺はガス室のみで行われたのではありません。ホロコーストの犠牲者およそ600万人のうち、20〜25%が射殺によるものであり、20%と考えてもおよそ120万人と相当な数を占めています。 こうした射殺を行った部隊としてラインハルト・ハイドリヒ率いる特別行動部隊(アインザッツグルッペン)が有

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    judgeer 2019/08/19
  • 遠藤晶久/ウィリー・ジョウ『イデオロギーと日本政治』 - 西東京日記 IN はてな

    まず、こののインパクトは帯にも書かれている、「維新は「革新」、共産は「保守」」という部分だと思います。 若年層に政党を「保守」、「革新」の軸で分類されると、日維新の会を最も「革新」と位置づけるというのです。そして、以下のグラフ(134p図5.1)から読み取れるように、20代が無知だからというのではなく、20〜40代に見られる現象なのです。 書は、さまざまなサーベイなどを通じて現在の日の有権者の政治意識を明らかにしようとしたです。ソ連の崩壊や社会党の退潮、小選挙区比例代表並立制の導入と新進党、民主党といった野党の誕生の中でも、政治を語る言葉はそれほど変化しませんでしたが、冒頭にもあげた「保守/革新」の変容などをサーベイによって示すことで、若い世代に起きている政治認識の変化を浮き彫りにしています。 さらに都知事選に出馬した田母神俊雄の支持層から分析した日の極右層の姿や、若者の「自民

    遠藤晶久/ウィリー・ジョウ『イデオロギーと日本政治』 - 西東京日記 IN はてな
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    judgeer 2019/08/19