北朝鮮は9月8日、最高人民会議(国会)で核兵器使用条件などを定める「核戦力政策に関する法令」(以下「核法令」)を採択し、党総書記の金正恩が「核放棄のための交渉はあり得ない」「核はわれわれの国威であり、国体であり、共和国の絶対的な力である」とする施政方針演説を行った。法令と演説を詳細に分析すると、金正恩政権の置かれた苦境がよく分かる。 金正恩は今、二つのことに恐怖を感じている。第一に、韓国の尹錫悦政権成立後に急速に正常化した米韓軍事同盟への恐怖だ。第二が、制裁と国境封鎖で生活難に苦しむ人民の不満が高まっていることへの恐怖だ。 米韓軍事同盟への恐怖 まず、第一について見ていこう。核法令では、核の先制使用もあり得ることを明文化する五つの「核使用条件」が定められた。 相手が核攻撃をしてこなくても、核以外の大量殺りく兵器による攻撃を受けるか、それが差し迫ったと判断される場合、あるいは「国家指導部と国