【読売新聞】
「殺人は決して許されないが…」 安倍晋三元首相銃撃事件の評価を巡り、メディアや交流サイト(SNS)で目立つ言説にそんな前置きから始まる言い回しがある。事件から1年を経てもなお目につくが、どうもうさん臭い印象をぬぐえない。 多くの場合、こんな本音が続く。「悲惨な境遇から犯行に走った気持ちは分かる」「埋もれていた問題が事件によって表面化した」。いくら前置きで予防線を張っても、テロリストと背景・動機を絡め、過度に意味を与えるのは危うい。共感することで結局はテロ容認に直結するロジックになってしまうのだ。 典型的な例は、安倍氏を殺害した山上徹也被告(42)=殺人罪などで起訴=の刑の減軽を求める署名活動だろう。賛同する声には山上被告への行き過ぎた共感や英雄視も含まれる。国民全体からすればごく少数に過ぎないが、その種の言説の罪深さは常識に立ち返るとよく分かる。 山上被告は確かに、母親が統一教会(現・世界
大きすぎた犠牲は要人警護の教訓に生かされたのだろうか。 そうは思えない。 安倍晋三元首相は1年前の7月8日、奈良市の近鉄大和西大寺駅北口で演説中、犯人に後ろから7~5メートルまで接近され、撃たれた。 後方の警備が明らかに手薄なのに、奈良県警は対策をとらなかった。その13日前に同じ現場で自民党幹事長が演説して何もなかったからだ。警察庁は「警護員の配置が安易な前例踏襲で、適切な措置をとっていれば事件は防げた可能性が高い」と総括した。 警察全体が前例踏襲と形式主義に陥っていた。警察庁は要人警護の実際を都道府県警に任せ、首相についてのみ警護計画を事前報告させていたが、安倍氏については「元首相」のため関与しなかった。形式主義を打開すべく、警察庁は全ての警護対象者について警護計画を事前審査し、全面的に関与することとした。 だが新たな運用から8カ月後、今度は岸田文雄首相が和歌山で襲われた。演説直前に10
銃撃現場近くで取り押さえられた男性から取り上げられた筒状のもの=8日午前11時37分、奈良市(安元雄太撮影) 発生1年を迎えた安倍晋三元首相銃撃事件の現場となった奈良市の近鉄大和西大寺駅周辺で8日午前11時半過ぎ、ユーチューバーとみられる男性数人が警察官に取り囲まれ、一部がパトカーで連行される騒ぎが起きた。 騒動を起こした男性の知人によると、山上徹也被告(42)の自作銃に似せた、アルミホイル2つを黒色のテープで巻いた筒状のものや、「No Cult」と書かれたうちわを現場付近で取り出したところ、関係者から注意を受けたという。
【読売新聞】 安倍晋三・元首相が銃撃されて死亡してから1年となった。事件が浮き彫りにした教訓や課題は重い。一つずつ克服し、安全な社会を目指していかねばならない。 安倍氏は昨年7月8日、奈良市の街頭で選挙演説中に、手製の銃で撃たれて命
安倍晋三元首相銃撃事件で、殺人罪などで起訴された山上徹也被告(42)には、事件から1年となる今も差し入れや手紙の送付といった支援の動きがやまない。母親の信仰する旧統一教会(世界平和統一家庭連合)への恨みを動機に挙げ、教団を巡る問題がクローズアップされたことなどが共感を呼んだとみられるが、まるで英雄視するような見方に専門家は「卑劣なテロを認めてはならない」と警鐘を鳴らす。 6月12日午前、奈良地裁に届いた段ボール箱に金属探知機が反応した。午後には銃撃事件の第1回公判前整理手続きが予定されていたが、地裁は箱の中身が危険物の恐れがあるとして期日を取り消した。 箱の中身は、山上被告の刑の減軽を求める約1万3千人分の署名やコメントを印刷した書類だった。送り主はインターネット上で山上被告を支援する署名活動を行っている東京都清瀬市の斉藤恵さん(59)。取材に「妨害する意図は全くなく、軽率で申し訳なかった
昨夏、列島を震撼(しんかん)させた凶弾が一人のお笑い芸人を岐路に立たせた。安倍晋三元首相の物まねで芽が出始めていたビスケッティ佐竹さん(40)。このネタを続けていいのか。何より今、笑いは必要なのか。心の整理がつかず安倍氏の物まねを自粛した。ふさぎ込んだ日々と昨年9月の国葬、そして妻の昭恵さんとの面会。原点に立ち返った佐竹さんは大きな決断を下した。 昨年7月8日、スマートフォンにおびただしい数の通知が届いていた。<大変なことになっているよ>。ネットニュースのヘッドラインに言葉を失った。「安倍元首相銃撃される」「散弾銃か、意識不明」。何が起きたか分からず、ただ無事を祈るだけだった。その日の物まね舞台の出演予定をキャンセルし、道具を抱えて帰宅。自宅では妻が泣き崩れていた。 夕方、安倍氏が亡くなる。悲しみと憎しみ、そして未来への不安。感情をのみ込む余裕もなかった。 <(物まねを)絶対やめないで><
山上徹也被告=令和4年7月25日、奈良市(永田直也撮影)安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件で、殺人や銃刀法違反罪で山上徹也被告(42)が起訴された。殺人罪に問われれば原則、市民が審理に参加する裁判員裁判の対象になる。ただ、過去には裁判員に危害が加えられる可能性を考慮し、殺人罪であってもプロの裁判官だけで審理されたケースもある。安倍氏の政治家としての評価や、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)という宗教が絡む事案。異例のテロ事件の審理で裁判員を除外する可能性はあるのか。 裁判員法では、たとえ対象事件であっても、裁判員やその親族が危害を加えられたり、平穏な生活が著しく侵害されたりする恐れがある場合は裁判官のみで審理すると定めている。検察官や弁護人が請求するか、裁判官の職権で決める。
奈良市で昨年7月、参院選の応援演説中だった安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件で、奈良地検は13日、殺人と銃刀法違反の罪で、山上徹也容疑者(42)を起訴した。母親が入信する旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)への恨みから、つながりのある安倍氏を狙ったが、実際に犯行を決意したのは事件5日前とみられ、「(困窮で)死ぬ前に銃撃を決意した」と供述していた。歴代最長政権を担った元首相をターゲットにした未曾有の事件。真相解明の舞台は余罪の捜査を残して法廷に移る。 「個別の事件の中身、証拠関係に触れることになるので、回答は差し控える」 13日午後、山上被告の起訴について説明した奈良地検の山崎英司次席検事は、記者からの質問にほとんど答えなかった。起訴を告げた際の被告の反応も「差し控える」とだけ述べた。 捜査関係者によると、山上被告が銃の製作を始めたのは令和3年春ごろ。火薬の乾燥などに使うため、奈良市内の
安倍晋三元首相の銃撃事件は13日、殺人や銃刀法違反罪で山上徹也被告(42)が起訴され、真相解明の舞台は余罪の捜査を残して法廷に移る。歴代最長政権を担った元首相が街頭演説中に襲撃された異例のテロ事件とはいえ、被害者はあくまで安倍氏1人。今後、公判前整理手続きで争点が絞られていくが、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)への恨みに端を発した動機が量刑にどう影響するのか、死刑判決の適否を含めて注目される。 聴衆の前で銃撃した山上被告の犯人性は明白で、審理は刑事責任能力の有無や量刑が中心になるとみられる。旧統一教会への恨みが安倍氏の狙いに転じたとする動機には不可解な面もあり、検察側は起訴前に鑑定留置を実施し、刑事責任能力があると判断した。これに対し、弁護側も心神喪失による無罪や心神耗弱による刑の減軽を求め、公判前に精神鑑定を請求する可能性がある。 鑑定留置のため奈良西署から移送される山上徹也容疑者
安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件で、奈良地検は13日、殺人容疑で送検された山上徹也容疑者(42)を殺人と銃刀法違反の罪で起訴した。5カ月超にわたる精神鑑定の結果、刑事責任能力に問題はないと判断した。今後裁判員裁判で審理される見通し。 山上被告はこれまでの調べに対し、母親が入信し、多額の献金をした旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)に恨みを募らせ、教団とつながりがあると思った安倍氏を狙ったと供述していた。 地検は、事件当時の山上被告の精神状態を調べるため、昨年7月25日から今月10日まで鑑定留置を実施。専門医による面談を通じて成育歴や生活状況などを慎重に調べた結果、刑事責任能力を問えると判断した。 山上被告は鑑定留置終了後、大阪拘置所から捜査本部のある奈良県警奈良西署に移送され、地検や県警が起訴に向けた詰めの捜査を進めていた。
父の自殺、母親の旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)への傾倒、そして多額献金の果ての一家崩壊-。思春期にそんな体験をした山上徹也容疑者(42)は「教団と深い関係にある」として安倍晋三元首相を銃撃、殺害した。しかしテロ行為に訴えて家族の断絶が埋まるはずもない。事件後も母親は教団のつながりを頼り、親族のもとを去った。 「5千万円が返ってきたことについて、どう思いますか」 山上容疑者の伯父(77)によると、母親は昨年7月の事件から間もないころ、伯父宅で警察の聴取を受けた。 母親から教団にわたった金は総額1億円超。弁護士だった伯父はかつて山上容疑者やその妹らのために返金交渉を行い、平成26年までに5千万円を回収。しかし母親の手に戻った大金が、その後どうなったかは不明という。 母親はその経緯について対面した刑事にこう答えた。「あれはお義兄(にい)さんが勝手にやったこと。統一教会に申し訳ない」 事件
安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件で、山上徹也容疑者(42)=殺人容疑で送検=が鑑定留置されている大阪拘置所(大阪市都島区)にはこの半年間、現金や服などの差し入れが続々と届き、現金書留は100万円以上に達している。 山上容疑者の伯父(77)によると、オンラインで拘置所に差し入れできる専門店のサービスを通じ、山上容疑者あてに服や菓子類が大量に配送されている。拘置所に収容しきれない分は伯父宅へ届けられている。 これまでに届いた現金書留は100万円以上。大手コーヒーチェーンで使えるプリペイドカードが入っていたことも。手紙が伯父宅に直接届くケースもあり、「(山上容疑者を)支えてやってください」「絶対に死なないでと伝えてください」という趣旨の文面だったという。 また、インターネットの署名サイトでは、山上容疑者の刑の減軽を求める署名活動が続いており、すでに1万を超える署名が集まった。 コメント欄には
宗教学者の島薗進・東京大名誉教授(本人提供)安倍晋三元首相銃撃事件後、被害者救済法が施行されるなど、政治と宗教の関係に変化の兆しが見えることは確かだ。だが、実際にどの程度実効性があるのかは、まだ分からない。多くの人権侵害が確認され厳しい対処が必要だが、広く宗教団体の声を聞くことも求められる。 また世界平和統一家庭連合(旧統一教会)がなぜここまで多くの人権侵害や不法行為ができたのか、本格的な調査が必要だ。その中で統一教会と政治家との関わりのどこに問題があったのか、はっきりさせなければならない。 自民党は昨年、党所属議員と旧統一教会との接点に関する点検結果を公表したが、点検程度であり、人によって答え方が違い、大事な問題がいくつも抜けていた。少なくとも、非常に関係が深くなってきた平成22年まで遡(さかのぼ)って調査する必要がある。特定の宗教団体が多くの政治家に影響を与え、教団の不法行為や人権侵害
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