最初に、センチメンタルな記憶を書いてみたい。 小学校の低学年の頃の話だ。 当時、同じクラスに母親しかいない友人がいて、ある時、彼は僕の持っていたミニカーを「いいなぁ。いいなぁ。俺にくれよぉ~」と冗談めかして言った。何度も言った。 そのミニカーは、僕が親からもらった少ないお小遣いで買った大事なコレクションだった。 でも、彼にあげないとなんだか悪いような気がして、迷った挙句、帰り際にあげてしまった。 帰宅すると、母親から「あのミニカーは?」と聞かれた。 「あの子にあげたよ」と答えると、「今すぐ返してもらいなさい」と叱られてしまった。 友人が「片親」と噂で聞いていた母親は、幼い僕が同情からものをあげてしまったことを見抜いていたのだ。 もちろん、その時はそういう説明を母から受けてはおらず、釈然としない気持ちと、一度あげたものを「返して」と言うつらさに揺れながらトボトボ歩き、友人宅の玄関で「お母さん