斎藤環『家族の痕跡』を読了。一昨年は本を出しまくり状態でしたが、去年は『「負けた教」の信者たち』くらいしか出さなかった斎藤環。さすがにネタ切れなのかと思ったら、今回の本はすごい面白い! タイトルからわかる通り「家族」について語った本なんだけど、精神分析を枠組みとして用いるものとして当然ながら家族に決定的な地位を与えつつも、社会学的なセンスでもってその「幻想」に対して揺さぶりをかけるこの本は、まさに斎藤環ならではの仕事であって、腐る程積み上げられてきた「家族論」に新たな視点を提供するものだと思う。 この本は、もともと「ちくま」に連載されたものをまとめたもので、いくつかの視点を切り替えながら「家族」について論じている。 第1章・第2章は、著者の得意分野である「ひきこもり」の問題などを取り上げつつ、家族のある種の病理的な側面に対して精神医学の分野からアプローチしたもので、ベイトソンのダブルバイン