所得は、価格に生産量をかけた売上額からコストを引いたものである。我が国農政の特徴は、農家所得を向上させるために、規模拡大や収量の増加によるコスト削減ではなく、手っ取り早い方策として価格を上げたことである。その典型が米である。 総農地面積が一定で一戸当たりの規模を拡大するためには、農家戸数を減らさなければならない。組合員の圧倒的多数が米農家で、農家戸数を維持したい農協は、米農業の構造改革に反対した。少数の主業農家ではなく多数の兼業農家を維持する方が、農協にとって農外所得や農地転用売却利益の農協口座への預け入れなどを通じた農協経営の安定や政治力維持につながるからである。高米価自体、農協の米販売手数料収入、肥料、農薬、農業機械などの農業資材販売の手数料収入を高くすることに貢献した。食管制度の時代、農協は生産者米価引上げのため一大政治運動を展開した。 農協の思惑通り、1960年代以降の生産者米価引