■まえがき 2009年11月より中野ブロードウェイで開催されている「資料性博覧会」。「資料系」と呼ばれる、収集、調査、考察、批評に特化した同人誌。数ある同人誌即売会の中でもこの一風変わった即売会を主催しているまんだらけ國澤さんに、資料系同人誌に対する想いや今後の展望について伺ってみた。 ■なぜ「資料性博覧会」なのか ――資料系同人誌即売会を開催するにあたっての、きっかけがあれば教えてください。 國澤:コミケにはものすごい数のサークルが参加しているんですが、割とコミケ全体で見ても資料系同人誌というジャンルはとても少なくて、おそらく100もないと思うんですよ。僕が資料系同人誌に興味を持ったのは2008年頃だったんですが、その頃、『仮面ライダー電王』が女性向けの同人誌を中心にすごく盛り上がっていて、でも逆に研究本のスペースは縮小されてしまったんです。それまでずっと仮面ライダーで活動を続けて
『新世紀エヴァンゲリオン』以後のオタク評論が扱ってきた自意識の問題を軸にして、アニメ、ゲーム、ライトノベル、批評などなど日本のサブカルチャーを中心に大きな影響を与えたキーワード「セカイ系」を読み解き、ポスト『エヴァ』の時代=ゼロ年代のオタク史を論じる一冊。 『セカイ系とは何か』はタイトルが示すように「セカイ系」とは何かを説明している本だが、同時に「セカイ系」を一つの基準として、1995年以降のオタク史を概観する本である。1995〜1999年、2000〜2003年、2004〜2006年、2007〜2009年の四つに区切り、エヴァンゲリオンの登場と影響、その後に現われた作品傾向、セカイ系という言葉の拡散、現状と諸問題を、それぞれ整理して流れを解説する。 「セカイ系」というのはフィクションの傾向の一つと考えて問題ない。時代によって意味も受容のされ方も異なるが、原義(2002年)は「エヴァンゲリ
同人誌の可能性を拡大する『京都、春。』 「ルビコンハーツ」加野瀬未友インタビュー A3サイズのフルカラー同人誌『京都、春。』を発表した同人サークル「ルビコンハーツ」。版型の大きさのみならず、直販ショップの自主運営による頒布や高精細印刷技術「Fairdot 2」の導入、桜の花の芳香印刷というユニークな仕掛けの活用など、その様々な試みが示す作り手の意図からは、同人誌による表現活動が直面している「今」が見えてくるようです。『京都、春。』を企画・製作した「ルビコンハーツ」の加野瀬未友氏をネットワーカー・ばるぼらさんが直撃、現場のお話から本と出版の未来を探ります。 ■ルビコンハーツができるまで ――加野瀬さんは美少女ゲーム誌『PUREGIRL』(1998年2月創刊、ジャパンミックス。1999年よりビブロスに移り『カラフル・PUREGIRL』)編集長時代に、若手の、特にインターネットを積極的に活用して
さやわか × ばるぼら〜対談:2000年代におけるインターネットの話 【後編】 2010年お正月企画の最後を飾るのは、昨年に引き続きさやわかさんとばるぼらさんのお二人です。2010年代を迎えたいま、ここ10年間のインターネットを改めて振り返ります。今夜は前編に引き続き、後編のお届けです! さやわか:サービスの中では、おそらくいま一番注目されているものの一つであるTwitterとかも、僕はゼロ年代後半の個人による編集能力の拡大という視点で語れるんじゃないのかなと思ってるんですけどね。 ばるぼら:最近、まとめるサイトができたじゃないですか。 さやわか:「Togetter」とかね。あんなのがまさにそうだと思うんです。Twitterでは文脈をユーザーが個別に作り出さないといけないという需要があるからこそ、ああいうサービスが登場するわけですよね。ユーザー同士が文脈を作ると言えばWikiなんかは古くか
さやわか × ばるぼら〜対談:2000年代におけるインターネットの話 【前編】 2010年お正月企画の最後を飾るのは、昨年に引き続きさやわかさんとばるぼらさんのお二人です。2010年代を迎えたいま、ここ10年間のインターネットを改めて振り返ります。昨年は動画でお送りしましたが、今年はテキストでお届けです。まずは2000年、皆さんは「インターネット博覧会」を覚えていますか? ■2000年代はインパクから始まった! 編集部:ここ10年のインターネットについて、お願いします。 ばるぼら:何それ(笑)? 段取りは? 丸投げ?……ええと、では2000年からのインターネットについて。 さやわか:まず2000年といえば……。 ばるぼら:2000年といえば……、インパクっていつでしたっけ。 さやわか:え、セカンドインパクト? ばるぼら:(笑)いや、インパク。 さやわか:あー! なんかありましたね。ほら、1
Special issue for Silver Week in 2009. 2009シルバーウィーク特別企画/ WEBスナイパー総力特集! 『コボちゃん(1)』 著者=植田まさし 出版社=蒼鷹社 発行=1982年12月1日 特集『四コマ漫画とその周辺』 四コマ漫画の巨匠・植田まさしを読み解く! 来るべき植田まさし批評のために シルバーウィークにWEBスナイパーがお届けした特集記事「四コマ漫画とその周辺」、特集の最後は、偉大なベストセラー作家・植田まさしにばるぼら氏が迫ります! ワタシはおそらく世界に八千万人はいるであろう植田まさし研究家の一人である。植田まさしが現代漫画史において笑いのホームラン王であることは言うまでもないが、しかし漫画批評の場において正当に評価されているとはとても言えない。最近出た清水勲『四コマ漫画 北斎から「萌え」まで』(岩波新書)を見ても、アイデアの多様さ=継続力に
special issue for happy new year 2009. 2009お正月特別企画! 2008年総括! ばるぼら x さやわか 新春人形対談! 【1】
『漫画をめくる冒険』は、今年3月に出版された漫画評論の同人誌である。同人誌でありながら夏目房之介や宮本大人、伊藤剛など漫画批評家界隈で非常に高い評価を受け、著者の泉信行は『ユリイカ』6月号の特集「マンガ批評の新展開」においても大きくフィーチャーされた。現在では同人誌イベントにて販売されているほか、「タコシェ」などの同人誌を販売する書店や「Lilmag」などを通じてネット通販で入手できる。 では、本書がここまで評価される理由とは何なのか。それはこの本が漫画評論の更新を図ろうとする意識で書かれているからだ。本書において泉は、漫画のコマを「誰でもない者の視点」と「誰かの視点」に分け、特に後者、すなわち漫画内のキャラクターごとに絵柄が変化するという事実に注目する。 どういうことだろうか。これまでの漫画表現論は、基本的に「読者の目から見て絵がどうであるか」という視点で読まれてきた。それは泉が本書を執
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