東京電力福島第1原発事故の影響で比較的放射線量が高い千葉県柏市で、父母らでつくる市民団体が市に協力し、子供の遊び場の除染や公園の放射線量を測る取り組みが進んでいる。事故後しばらくは、市民が「対策が遅い」と市を批判し対立していたが、市が謝罪して歩み寄り、協力する関係になった。団体のメンバーらは「これこそ市民と行政の協働」と話している。 「線量は問題ないレベル」。事故後、そう言い続ける市役所に対し、まず動いたのは我が子の健康被害を心配した母親たちだった。見知らぬ者同士が口コミやインターネットでつながり、6月に1万人超の署名簿を添えて市に対策を要望した。 驚いた市は7月、小中学校に除染を指示して歩み寄った。9月には秋山浩保市長が「不安に適切に対応できていないとのおしかりを受けます。大変申し訳ありません」と異例の謝罪文を市の広報紙に寄稿。両者のわだかまりは次第に小さくなっていった。 10月に入ると
経済産業省の安井正也官房審議官が経産省資源エネルギー庁の原子力政策課長を務めていた04年4月、使用済み核燃料を再処理せずそのまま捨てる「直接処分」のコスト試算の隠蔽(いんぺい)を部下に指示していたことが、関係者の証言やメモで分かった。全量再処理が国策だが、明らかになれば、直接処分が再処理より安価であることが判明し、政策変更を求める動きが加速したとみられる。 2カ月後、青森県六ケ所村の再処理工場稼働で生じる費用約19兆円を国民が負担する制度がとりまとめられており、データ隠しが重要な決定につながった疑いが浮上した。 再処理を巡っては02年以降、東京電力と経産省の首脳らが再処理事業からの撤退を模索していたことが判明している。安井氏は京大工学部原子核工学科卒の技官で長年原子力推進政策に関わってきた。いわゆる「原子力ムラ」が撤退への動きを封じた形だ。 試算は通産省(当時)の委託事業で、財団法人「原子
◇指示の元課長、現在は規制の中心 使用済み核燃料の直接処分のコスト試算隠蔽(いんぺい)は、結果的に青森県六ケ所村の再処理工場稼働に有利に働くという点で、使用済み燃料受け入れを提案する02年のロシアの外交文書を隠した問題と同じ構図だ。情報公開に背を向けても再処理に固執する「原子力ムラ」の異常とも言える論理が浮かび上がる。今夏をめどに新しいエネルギー政策を打ち出す政府のエネルギー・環境会議には、徹底した情報公開に基づく論議が求められる。 部下に隠蔽を指示した経済産業省資源エネルギー庁の安井正也原子力政策課長(当時)が現在、東京電力福島第1原発事故後の安全確保策作りを進める「原子力安全規制改革担当審議官」という要職を務める点でも問題は深刻だ。安井氏は原子力安全・保安院を経産省から切り離し、4月に原子力安全庁として発足させるための準備にも深く関わっている。データ隠しまで行った原発推進派を、規制とい
放射性物質で汚染された焼却灰が入ったドラム缶。プラントのすき間や通路に保管していたが満杯になり、清掃工場自体が運転休止に=千葉県柏市の市南部クリーンセンターで2012年1月5日午前9時過ぎ、早川健人撮影 東京電力福島第1原発事故による放射性物質で汚染された焼却灰の保管場所が満杯になり、千葉県柏市は5日午前、清掃工場「市南部クリーンセンター」の運転を再び休止した。同センターの休止は昨年9月からの約2カ月間に続き2回目。新たな保管場所が決まっておらず、再開の見通しは立っていない。 同市によると、埋め立て処分可能な国の基準濃度1キロ当たり8000ベクレルを超えた焼却灰は、同センター内に約200トン(ドラム缶1049本)が保管されている。保管可能なスペースはドラム缶で埋まり、炉内にも焼却灰約30トンが残っている。 同センターの焼却設備は高性能で焼却灰の体積を小さくできる一方、焼却されない放射性セシ
東京電力福島第1原発事故の収束に向けた工程表のステップ2完了を受け、野田佳彦首相は16日の記者会見で「事故そのものは収束した」と訴えた。「同原発が安全になった」ことを宣言し、政府への国内外の懸念と不信を払拭(ふっしょく)することを優先したためだ。しかし、原発の外の「三つの課題」を解決する道筋は見えていない。記者団からは「宣言は拙速」との指摘も相次いだ。 首相は原発事故について「全ての国民、世界中の皆様に多大な迷惑をかけ申し訳ない」と改めて謝罪。「原子炉の安定状態が達成され、不安を与えてきた大きな要因が解消される」と強調した。 しかし、依然9万人近くが事故に伴う避難生活を余儀なくされ、全国で放射性物質の検出が続く中での「事故収束宣言」は、被災地の実態とあまりにかけ離れている。首相も、宣言はあくまで工程表で政府が自ら定めた条件を満たしたに過ぎないことを認めた上で、「被災地感情として『まだ除染や
文部科学省は27日、清水潔事務次官(62)が退任し、後任として、森口泰孝文部科学審議官(60)を昇格させるなど幹部の人事異動を発表した。発令は来年1月6日。森口氏は原子力部門の担当者として高速増殖原型炉「もんじゅ」を推進してきた経歴があり、存廃を含めた見直し論議への影響も注目される。 森口氏は76年に旧科学技術庁に入り、主に原子力や宇宙開発を担当。同庁原子力局動力炉開発課長だった99年5月には、もんじゅを巡るテレビ討論会で「短期的には必要なくても、長期的には高速増殖炉でプルトニウムを増やして燃やす必要がある。原子力を認めないなら、代わりをどうするのか」などと発言したことがあった。文科省への再編後も、原子力政策を担う研究開発局長などを歴任してきた。 中川正春文科相は27日の閣議後の記者会見で、森口氏の起用について「原発対応を期待し、中身を分かっているだけに、現実的な技術ベースも含めた判断がで
東京電力が21日に公表した福島第1原発1~4号機の廃炉工程表で、廃炉に必要な費用を明記しなかったのは、廃炉費用が膨大になることを認めると会計上の処理を迫られて債務超過に陥り、企業として存続できなくなる可能性があるためだ。しかし、いずれ処理を迫られることは確実で、政府は公的資金を使って資本注入し、東電を実質国有化して賠償主体として存続させる道を検討している。今後、政府や東電の主力金融機関などの間で、東電の経営問題の検討が本格化する。 最長40年かかるとされる廃炉作業は、多くの困難を伴う上、費用がどこまで膨れ上がるか現段階では見通しにくい。政府の第三者委員会は10月、廃炉に1兆1510億円が必要と試算しており、東電も約9400億円を経費として会計処理する方針を決めている。 だが、「費用が膨れ上がるのは確実。2000億円余を追加計上するだけで済むはずがない」(東電幹部)のが実態だ。「廃炉費用総額
◇那須塩原市議会、県へ対策要望へ 福島第1原発事故による放射性物質の汚染が懸念される那須塩原市千本松の県営「那須野が原公園」(59・4ヘクタール)で14日、市議会放射能対策特別委員会(関谷暢之委員長)が25地点を測定したところ、1地点から毎時17マイクロシーベルト近い放射線が測定された。ただし、高さ5センチの地点。だが、同委は県に対し放射線量表示や除染などの対策を要望するとしている。【柴田光二】 25地点中、高さ5センチの13地点で1マイクロシーベルト以上を検出。最高値は、公園正面の駐車場の隅にある排水口の落ち葉や土が集まった部分で、高さ5センチで測ったところ毎時16・8マイクロシーベルトを検出。このほか、同じ高さで山林で3・8マイクロシーベルト、正面入り口の土の上で2・6マイクロシーベルト、人工芝で2・39マイクロシーベルトだった。 同公園は広大な自然を利用した娯楽施設で、アスレチックや
世田谷区は20日、区立小中学校と保育園の給食で提供されている牛乳から極めて微量な放射性セシウムが検出されたと発表した。微量であるため健康に影響はなく、牛乳の提供は続けるという。 区によると、今月に入り5回にわたって検査し、5日に採取した分からセシウム134が1キロ当たり2・8ベクレル、セシウム137が同3・5ベクレル検出された。他の4回は検出されなかった。 世田谷区は6月から給食の牛乳の放射性物質測定を実施。11月分で初めて微量の放射性セシウムが検出されたため、追加措置として今月も週2回、定期測定をした。牛乳は同じ業者から一括して仕入れ、区内の全94校の給食に提供されている。【吉住遊】 〔都内版〕
「原発の発電コストは安い」。これまで原発推進のひとつの根拠として繰り返されてきた言葉である。 東京電力福島第1原発の大事故を経て、この「安価神話」が崩れた。 事故後、原発コストの見直しを進めてきた政府の「コスト等検証委員会」の試算によると原発の発電コストは最低でも1キロワット時当たり8.9円。これまで電力会社や政府が提示してきたコストの1.5倍となる。 放射性物質の除染や廃炉、損害の費用など今後の事故処理の費用がかさめば、さらにコストは増す。 石炭火力、液化天然ガス(LNG)火力が10円前後であることを思えば、原発のコストの優位性は大きく揺らいだといえる。風力や地熱も条件がよければ原子力に対抗でき、太陽光も20年後にはそれなりに安くなる可能性が示されている。 政府はこれをきっかけに、「コスト高」を理由に敬遠されてきた再生可能エネルギーへの投資と推進政策を本気になって進めるべきだ。 今回の試
記者に囲まれ質問に答える九州電力の深堀副社長(左)=福岡市中央区の九州電力本店で2011年12月22日午後2時31分、和田大典撮影 九州電力の「やらせメール」問題で、九電は22日、国から求められていた最終報告書の再提出をせず、一連の問題を終わらせたい考えを鮮明にした。九電第三者委員会から「やらせメールの発端」と指摘された佐賀県の古川康知事も前日に減給処分が決まり、収束ムードを漂わせる。知事関与の核心部分をあやふやにしたまま、両者が足並みをそろえるように年内で幕引きをはかろうとしていることに、県民からは不満が噴出した。 「再提出はしない。これで終わりにしたい」。九州電力の深堀慶憲副社長はこの日、国に再発防止策の説明書を提出後、福岡市内に戻って報道陣にこう語り、「再発防止策と信頼回復に取り組むことが(九電が今後)やるべきことだと思う」と述べた。また、枝野幸男経済産業相らとの交渉窓口として、接触
東京電力福島第1原発事故から2週間後の3月25日、菅直人前首相の指示で、近藤駿介内閣府原子力委員長が「最悪シナリオ」を作成し、菅氏に提出していたことが複数の関係者への取材で分かった。さらなる水素爆発や使用済み核燃料プールの燃料溶融が起きた場合、原発から半径170キロ圏内が旧ソ連チェルノブイリ原発事故(1986年)の強制移住地域の汚染レベルになると試算していた。 近藤氏が作成したのはA4判約20ページ。第1原発は、全電源喪失で冷却機能が失われ、1、3、4号機で相次いで水素爆発が起き、2号機も炉心溶融で放射性物質が放出されていた。当時、冷却作業は外部からの注水に頼り、特に懸念されたのが1535本(原子炉2基分相当)の燃料を保管する4号機の使用済み核燃料プールだった。 最悪シナリオは、1~3号機のいずれかでさらに水素爆発が起き原発内の放射線量が上昇。余震も続いて冷却作業が長期間できなくなり、4号
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