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ブックマーク / d.hatena.ne.jp/zoot32 (31)

  • 2012-01-27 - 空中キャンプ

    映画『リトル・ミス・サンシャイン』(’06)におけるスティーブ・カレルの役柄は<プルースト研究者>であり、劇中、アメリカのプルースト研究者は全員ゲイという突拍子もない設定であった。さすがにそれは冗談だとしても、かかる設定がひとまずスティーブ・カレルという人物の説明として成立していたのは、ある種の文学作品の愛好者が特定の傾向を持ち、研究者たちの顔ぶれが濃くなっていくという世界共通の傾向があるためだとおもう。とっさに浮かぶのはピンチョンであり、海外のピンチョン研究サイトの充実などを見るにつけ、ピンチョン研究者はよほどの強者が揃っているのだろうなと想像するが、世界中のナボコフ研究者から提出された論文が掲載された書を読んでみて、ナボコフ研究者もかなり濃い顔ぶれが揃っているのではないか……と想像がふくらんだ。 このテキストは、国際ナボコフ学会に集まった論文をもとに構成された一冊だが、まずはその論文

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    riko 2012/01/27
  • 『働けECD わたしの育児混沌記』/植本一子 - 空中キャンプ

    下北沢の町を、小さな子どもを抱えて歩くECDを見たことがある。ECDが結婚して父親になったという話は聞いていたし、彼の著作(『失点・イン・ザ・パーク』)に書かれた厳しい生活の状況も知っていたので、その姿は何やら胸に沁みる光景であった。まさに「生活する者」の姿がそこにあったようにおもえたのだ。余計なお世話だが、赤ん坊を抱える手がややおぼつかず、落としたらどうしようと心配したことを覚えている。 ECDというのは80年代後半から長らく活動しているラッパーで、90年代にはメジャーレーベルからたくさんの音源をリリースしていたが、彼自身の著書によれば、メジャーとの契約が終了して以降は経済的に逼迫し、日中は仕事をしながら自主レーベルからのリリースやライブ活動というかたちを音楽をつづけていたという。アルコール依存症で体調を崩した時期もあったようだ。それでも、下北沢で見かけた彼と、彼の腕にしがみつく小さな子

    『働けECD わたしの育児混沌記』/植本一子 - 空中キャンプ
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    riko 2011/09/26
  • 僕のカセットを聴いてください - 空中キャンプ

    映画『アドベンチャーランドへようこそ』(’09)は87年の夏を舞台にしたせつない青春映画で、そのあまずっぱさにわたしはすっかりノックアウトされてしまったのだが、わけても劇中「わかるなあ」とうなずいたのは、主人公の青年ジェイムズが意中の女性に渡す、”J’s Favorite Bummer Songs”*1 と題された選曲カセットであった。好きな曲を集めてカセットを作り、意中の女性に渡すという行為を、かつて文化系の男はおこなった。いまとなってみればいくぶん気恥ずかしい行為かも知れないが、わたしもやったよ。その選曲になんらかの想いを込めていたのです。 そんな話題をとある飲み会でしていたところ、二十代女性からは「選曲したカセットを渡す人」など当にいるのか、とても信じられない、なんかダサい、という厳しい意見がでた。うつむく三十代以降の文化系の男性たち数人。わたしはほとんど逃げだしたい気持ちだった。

    僕のカセットを聴いてください - 空中キャンプ
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    riko 2011/08/16
    トム・ウェイツとかホリー・コール トリオとか入ったテープもらったの覚えてるし今でもmixCDとかもらいたいほうです
  • 食べものの味がよくわからない(ふろく:新ダイエット法考案) - 空中キャンプ

    あっ、わたしはこんな人間だったのか。今まで意識していなかった自分自身の性質について、ふと気がついてしまうタイミングがある。たとえば、十九歳になるまで脇の下にある巨大なほくろに気がつかないとかね。わーこんなところにほくろが。しかもわりと存在感がある。ことほどさように、自分自身とはおもいのほか見えにくいものである。そして、これはわりと最近になって発見したのだけれど、わたしは味覚が鈍感で、なにをべてもうまいと感じてしまうのであった。 グルメな人、おいしい事をたのしんでいる人というのは世間にたくさんいるが、そうした人びとと比べて、わたしはに対するこだわり感、探求の姿勢が欠けている。人生におけるものごとの優先順位として、のポジションがそれほど上位にはこないのである。グルメな人であれば、感激するほどおいしいごはん、決して忘れられないあの料理といったにまつわる官能的な記憶があるはずだが、わたし

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    riko 2011/05/19
  • 2010-11-04 - 空中キャンプ

    小説家リディア・デイヴィスの短編集。もうすぐ彼女の新刊となる長編が出版されるので、おさらいのつもりで再読したのですが、やはりとてもすばらしかったです。小説というジャンルや区分さえ不必要であるような、ほんの数行の走り書きのような短編や、登場人物やあらすじすら存在しない短文にいたるまで、どれもが意外性と驚きに満ちています。もうすぐ読めるであろう長編もとてもたのしみになってきました。翻訳は岸佐知子さん。 失敗から学べるのならそうしたいが、世の中には二度めがないことが多すぎる。じっさい、いちばん大切なことは二度ないことだから、二度目にうまくやることは不可能だ。何か失敗をして、どうすればよかったのかを学習する。そして次こそうまくやろうと心構えをしていると、次の出来事は前のとはまるでちがっていて、また判断をまちがえる。そして今回のことについては心構えができるが、同じことが繰りかえされることは二度と

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    riko 2010/11/05
  • 『のけ者』/エマニュエル・ボーヴ - 空中キャンプ

  • 町田のあおい書店さんにいってきました! - 空中キャンプ

    こんにちは、伊藤聡です。今日、ふだんはあまり足を運ぶことのない、町田へいってきました。なぜ町田へいったのかというと、ここには「あおい書店」という、超絶すばらしい書店さんがあり、取材をしてきたわけです。アクセスは小田急線がべんりです(都内からのムーンウォークによる移動はおすすめしません)。町田駅を降りるとすぐ、modi(モディ)というおしゃれな建てものが見えてきます。 ここです! 階段を上がって近づいていくと…… あった! ここがあおい書店さんのあるビルだ。なぜこの書店さんがすごいかというと、この書店で働いている方がわたしのブログを読んでくださっていて、わたしの初めての『生きる技術は名作に学べ』をいきなり50冊注文、コーナーを作って大展開、という暴挙にでたからです。都内のどんな大型書店にだって、50冊は置いていない。つまりこのあおい書店町田店は、まちがいなく、わたしのが世界一たくさん置い

    町田のあおい書店さんにいってきました! - 空中キャンプ
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    riko 2010/01/18
  • 私たちまだ死んでない - 空中キャンプ

    サリンジャーは、「ジェローム・デイヴィッド・サリンジャー」という、それだけですぐにユダヤ系だとわかってしまう名前を隠すために、ずっと、JDサリンジャーと名乗っていたのだという。かくいう私も、ちょっとだけそれに似た理由で、たかこ BLと名乗っている。BLがなにを略しているのかを、私は口にすることができない。だから私は、行儀のいいタクシー運転手みたいに、余計なことをいわず、どこへいってもできるだけおとなしくしている。 私たちの日での生活はいくぶんきゅうくつだ。いつも、誰かに見つかってしまわないかとそればかりを心配している。三者面談のときには、お父さんにきちんとひげをそってスーツを着てもらうようにおねがいしなければいけなかった。「ちゃんとしたスーツを着てね」と私はいった。「なるべく原理主義者っぽくないやつ」。お父さんは肩をすくめて、「わかってるよ。俺は三者面談にはターバンを巻いていかない主義な

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    riko 2009/09/11
  • 『びんぼう自慢』/古今亭志ん生 - 空中キャンプ

    だめな人だとは知っていたが、ここまでだめだとはおもわなかった。志ん生人が半生を語り下ろしたこのを読みながら、わたしはあらためて、だめ人間の威力について考えざるをえない。この人はほんとうにだめだ。わたしは感動すら覚えながら、彼の半生を読み進めた。 志ん生が困るのは、落語だけは天才、というところで、そうでもなかったら、こんなめちゃくちゃなおっさんなどとてもまともに生きていけない。人がとことんまでだめを極めたとき、そこには聖性を帯びたなにかが立ち上がるが、戦前の志ん生には、ほんとうにだめな人にのみが持つうつくしいオーラ的ななにかが見えるような気がする。 なにより志ん生がひどいのは、誰の金であろうと平気で使い込んでしまう横領癖だ。たちがわるい。この人が「寄席をしくじった」「師匠をしくじった」という表現をするとき、たいていは使い込みか横領がばれて出入禁止になっている。父親のだいじにしていたキセル

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    riko 2009/09/01
  • 5/10文学フリマに出店します!- 空中キャンプ

    みなさんこんにちは。空中キャンプを書いている者です。GWいかがおすごしですか。わたしはなぜか仕事が休めず、基的には働いています。昨日、ようやく休みがもらえたので、せっかくだから遊ぼう! ということになり、渋谷のクラブでDJ KAORIのプレイを目撃してきました。 白いドレスでDJするケオリさんにもぐっときましたが、衝撃だったのは、DJブースに常時スタンバイしているアシスタントのお兄ちゃん。ケオリさんが曲をかけ終わって彼にレコードを渡すと、元のジャケットにしまうのである。そんな「レコードしまい係」の人がつねに横に待機しているDJをわたしは見たことがなかったので、そこに強烈なセレブ感を発見したことを書いておきたいです。 さて、今週末になるのですが、文学フリマという催しものが開かれます。ミニコミや同人誌の販売イベントですね。そこに、わたしも空中キャンプとして参加します。こうした催しものに参加す

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    riko 2009/05/06
    いこうかな
  • 『ジーザス・サン』/デニス・ジョンソン - 空中キャンプ

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    riko 2009/03/12
  • http://d.hatena.ne.jp/zoot32/20090115

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    riko 2009/01/16
    東京の水道水はそんなに悪くないと思う
  • Don’t Trust Under Forty - 空中キャンプ

    肉体は放っておいても歳を取っていくが、精神はそうはいかないものである。わたしももうすぐ三十七歳。三十代になってから、ブラッド・ピットがチベットですごしたのと同じ時間が経つ。三十代も後半にさしかかり、あとちょっとで四十歳というところまできている。あとちょっとで四十歳。ぐわあっ。 歳を取るのはべつにいい。もともと、さほど若さに価値観を置いていたわけではなかったからね。わたしは、精神もひとりでに歳を取ってくれるものだとばかり考えていたから、いまだに精神がきちんと成熟してくれないことに動揺しているのである。外見ばかりが歳を取り、内面がいつまでも子どもというのではみっともない。いまだにいちごポッキーやプリンが大好きなのである。精神はかってに歳を取ってくれない。おそらく人は、どこかのポイントで、意識的に成熟を選び取っていかないとまずいことになる。 なんでこういうことを考えていたのかというと、フィッツジ

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    riko 2008/11/19
    ブコウスキーみたいのがいい
  • 2008-04-07 - 空中キャンプ

    いぜんわたしの会社に、27歳の青年が勤めていた。明るくて愛想がよく、友達は多かったようである。彼は中途で入社したのだが、1年ていどで辞めていった。当初は期待されていた彼がなぜそのように短期間で退社したのかというと、これは「プロ野球選手が好きすぎてどうしようもなかったため」であった。 別に、どれほどプロ野球選手が好きだからといって、会社を辞めることはない。通常はそのように考えるものである。しかし現実そうはいかなかった。なぜから彼は、小学校3年生のころから、選手のサイン集めに凝りだしてしまい、それが止められなかったのだ。特に外国人選手のサイン収集への情熱はつよく、そのキャリアおよそ20年、彼が収集を開始した年いらい、来日したすべての選手のサインを持っているのがじまんだという。わたしは彼からはじめてその話をきいたとき、口では「ふーん」などと感心をよそおいつつ、内心なんだかいやな感じがしたのだった

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    riko 2008/04/08
  • 新生活の前にこれだけはできるようになっておきたい - 空中キャンプ

    もうすぐ進学、就職といった新生活をスタートさせる方がたくさんいらっしゃるとおもいますが、そういった場合に必要な心がまえをわたしがお伝えしたいとおもいます。社会とはきわめてきびしい場所です。あたらしい環境で生活するわけですから、できるだけ気持ちをひきしめてのぞんだ方がいいわけです。四月から、学生、もしくは社会人としてちゃんとやっていけるよう、わたしの意見に耳を傾けていただきたい。 ちゃんとおふろに入ってほしい。学生さんも社会人さんも、毎日おふろに入ってください。からだに石けんをつけてごしごしと洗ってほしいです。それができないとひどいことになります。へんなにおいがしてくるためです。いつも周囲にへんなにおいをまき散らしながら生きていく。こんなことがあってはいけないとわたしはおもう。というのも、わたしの職場にはひとり「すごくくさい人」がいる。こういう人がこまるのは、面と向かって指摘することがたいへ

    新生活の前にこれだけはできるようになっておきたい - 空中キャンプ
  • アイコ六歳 - 空中キャンプ

    私はマクドナルドべたことがない。音羽から竹橋へと向かういつもの帰り道、目白通りをゆっくりと走る車の窓から、赤地に黄色で大書きされたMの文字を眺めては、あれはいったいどんなべものなんだろうと考えを巡らせる。ガラス越しに見える店内には、座りごこちのわるそうな椅子や、いくぶん安定性に欠けたテーブルがあって、たくさんの子どもたちがハンバーガーをべたり、おまけについてきたプラスチックのおもちゃで遊んだりしている。そんなようすを見ていると、なんだか自分だけが取り残されたような気持ちになってしまう。私にはまだ知らないことがたくさんあるのだ。 私に会った人はみな、ずいぶんしっかりした話し方をする子なんですね、という。それがなんだかちょっと癪にさわる。もっとばかみたいな口調で話すとでもおもっていたのかしら。自分でこんなことをいうのもおかしな話だけれど、私ほど「自分は何者であるか」について考え抜いてき

    アイコ六歳 - 空中キャンプ
  • Never Go to Work / They Might Be Giants - 空中キャンプ

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    riko 2008/02/01
  • 2008-01-31 - 空中キャンプ

    「明烏」(あけがらす)という落語は、うぶな青年をはじめて遊郭へ連れていくというあらすじで、「エエ、男子と生まれて御婦人のお嫌いな方は御一名もない。御婦人だってそうですな。男がなかった日には、あのくらい詰まらないものはなかろうとおもいますが…」というイントロダクションからはじまる。このように決めつけてしまうと、ブロークバック・マウンテン方面からの反論もあるだろうから、「男子と生まれて御婦人のお嫌いな方は御一名もない」はいささか適切さに欠ける。しかしまあ、そこは大意として、「誰にだって欲望はある、それを肯定しよう」ととらえてほしい。「明烏」は、欲望を積極的に肯定していこうとする物語である。 考えてみれば、「欲望を肯定する」というのは、わりあいにむずかしい問題である。「明烏」がそうであるように、まさしく男女の関係は欲望のやりとりであり、ゆえにその取り扱いがむずかしい。欲望をあからさまにするのはど

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    riko 2008/02/01
    いい考察
  • 2007-10-10 - 空中キャンプ

    いい文章を書きたいのであれば、書き終えてから、あるていど時間を置いて読み直すといいとよく言われる。これは誰にとっても納得のいく方法だとおもう。時間を置くことで、客観的に文章を眺めることができるし、意味の伝わりにくいところは推敲できる。なにより文章ぜんたいをクールダウンできるから、時間を置き、推敲を通したテキストはより論理的で端正になる。 しかし、わたしはこの方法がどうも苦手だ。時間を置くと、いったいどうしてこんな文章を書いたのか、自分でもよくわからなくなってくるし、なにをおもしろいとおもって書いたのか、いまひとつおもいだせなくなってしまう。もちろん、文章を書き直すことで、感情の入りすぎていた部分は削られて、気持ちだけが空回りしていた言葉は、もっと別のフレーズに置き換えられる。だからこれはきっといい文章なのだ──すくなくとも、推敲前よりはずっと。でも、このテキストっておもしろいのかな、とわた

  • あらたなる声明 - 空中キャンプ

    「あのさー、もうすぐ声明だすことになったから」と、彼はいった。世田谷区のせまい1Kアパート。オリジンのバランス弁当をおいしそうべながら、かたわらに置いた2Lペットボトルの烏龍茶を、直で飲んでいる。彼と一緒に暮らしはじめて二年。すっかり日にもなじんでしまった。「俺、日人に生まれたらよかったな。日、ごはんうまいし、女の子かわいいしさ。男は、サウジアラビアの方がイケてるとおもうけど。サウジアラビアって服とかカッコわるいしねー。俺も学生服着たかったよ。そいで学生服デートするの。あはは」。僕は、声明のことが気になっていた。 「ちょっと、声明ってなに」と僕は訊いた。二年前、彼を居候させる条件はふたつあった。ひげを剃ること。そしてテロをやめること。タフな交渉の末に、彼はひげを剃り、テロをやめると約束した。じっさい、今の彼はテロとは無縁の生活を送っていた。ふたりでタイフェスティバルにいってグリー

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    riko 2007/09/12