映画『リトル・ミス・サンシャイン』(’06)におけるスティーブ・カレルの役柄は<プルースト研究者>であり、劇中、アメリカのプルースト研究者は全員ゲイという突拍子もない設定であった。さすがにそれは冗談だとしても、かかる設定がひとまずスティーブ・カレルという人物の説明として成立していたのは、ある種の文学作品の愛好者が特定の傾向を持ち、研究者たちの顔ぶれが濃くなっていくという世界共通の傾向があるためだとおもう。とっさに浮かぶのはピンチョンであり、海外のピンチョン研究サイトの充実などを見るにつけ、ピンチョン研究者はよほどの強者が揃っているのだろうなと想像するが、世界中のナボコフ研究者から提出された論文が掲載された本書を読んでみて、ナボコフ研究者もかなり濃い顔ぶれが揃っているのではないか……と想像がふくらんだ。 このテキストは、国際ナボコフ学会に集まった論文をもとに構成された一冊だが、まずはその論文